130回目 出入り口付近の掃除も終わったところで何かを感じた
出入り口に殺到していたモンスター。
そのほとんどがトモルによって倒された。
居合わせた冒険者達も、生き残ったモンスターを倒していく。
何せ50人余りの人数がいる。
トモルの魔術から逃れた数匹程度など怖くはない。
散発的に襲ってくるモンスターは、取り囲む冒険者に粉砕されていく。
おかげで出入り口あたりは綺麗になっていった。
「まだ少しは時間があるか」
そう言ってトモルは周囲を見渡す。
探知魔術も使ってあたりを調べたからはっきりとする。
モンスターの存在は感知できない。
見える範囲にいるものは全部倒したのだろう。
「どうだ、その気があるなら核を回収したら」
冒険者達にそう促してみる。
幸い、まだ時間はある。
崩壊してる最中だが、核を回収するくらいは出来る。
言われて冒険者達も考えていく。
「そうだな」
「今日、大して稼ぎになってないし」
命からがら逃げてきたが、その危険がないと分かると、今度は今後の生活が気になっていく。
そんな彼等は、目の前に転がってるモンスターに向かっていった。
核を剥ぎ取って稼ぎを作るために。
このダンジョンは今日が最後。
そういう事もあり、冒険者達はモンスターからここで最後の稼ぎを剥ぎ取っていく。
全部合わせて数百匹ほどいるそれらを解体すれば、多少の稼ぎにはなる。
これで最後と思うとやるせないものもあるが。
だが、それでも稼ぎは稼ぎである。
少しでも多く回収して、これからの足しにしなくてはならない。
幸い、周囲にモンスターはいない。
出入り口に殺到していたものを粗方片付けたのだ。
このダンジョンにいるモンスターの大半はこれで全部のはずだ。
襲われる可能性は低い。
冒険者達は、すぐに核のはぎとりを始めていく。
「ん?」
他の者達が作業に移っていく。
それを見てトモルは一休みしようと思っていった。
だが、その瞬間なにかを感じ取った。
目に何かがうつったわけではない。
耳で何かを聞いたわけではない。
触れる事が出来る範囲で何かを感じたわけでもない。
鼻に何かがにおってきたわけでもない。
だが、何かが、淀みというかうねりというか、そんなものを感じ取った。
それが流れてきた方向に、自然と目を向ける。
それは直観的な何かだった。
物理的に作用するような何かではなく、気配と言えるものだった。
いや、気配や魔力、オーラと呼ばれる気力なども、つきつめれば物理的なものなのかもしれないが。
トモルが感じ取ったのは、そういった検出する事も難しいような何かだった。
あるいはそれですらない何かである。
そんなあやふやなものに目がけて、トモルは動き出した。
理屈や理論より直観。
それがトモルの考えであった。
世の中には理屈や理論ではどうにもならないものもある。
いずれそれらも体系立てられて考えられ、原因などが究明される事もあるかもしれない。
だが、未だそれが出来てない時は、理由も原因も分からない不可解な現象になってしまう。
それらはほとんどの場合、感覚や直観で感じ取るしかない。
だからトモルは、この時感じた何かを優先する事にした。
何があるかは分からないが、何かが起こってるかもしれないと思って。
実際、そこには何かがあった。
残ったモンスターに襲われてる冒険者達が。




