126回目 冒険者達の回収
「生きてるか?」
目の前のモンスターを片付けたところで、声がかけられた。
そちらに目を向けると、背丈の低い仮面をつけた者がいた。
いったい誰なんだろうと思った。
状況からして、自分達を救ってくれた者だろうとは思った。
「ああ、何とか生きてる」
「そうか。
それは良かったな」
「ああ、まあな。
地面がいきなり盛り上がってくれたおかげだ」
「援護はうまくいったみたいだな」
その言葉で、冒険者達は確信する。
これをやったのは目の前の存在なのだろうと。
「あんたがやってくれたのか?
だったら助かったよ。
あれが無ければ今頃死んでたかもしれない」
「気にするな。
それよりも移動するぞ。
このままだとモンスターがやってくる」
「え?」
「あれは地面を盛り上げただけだ。
モンスターなら乗り越える事くらいは出来るぞ」
言われて状況を察した。
確かに盛り上がった地面は、物理的な障壁にはなってる。
ただそれだけだ。
これだけでは安全とは言えない。
昆虫型のモンスターは、空を飛んだり高く跳ね上がったりする。
また、地面や樹木ならば垂直であっても上り下りは出来る。
壁を越えてくる事など造作もないだろう。
「分かった、すぐに行こう」
「なら…………こっちだ」
そう言って仮面を付けた者は冒険者達を促す。
それは出入り口とは別の方向である。
だが、冒険者達は異論唱える事なくついていく。
今ここで質疑応答などしてる余裕は無い。
不安はあるが、仮面の存在を信じていくしかなかった。
「悪いけど、帰るのはもう少し後だ」
少し急ぎ足で移動しながら仮面の存在が声をかけてくる。
「他にも冒険者がいる。
それらを出来るだけ回収したい。
助ける理由や義理なんてないけど、放っておくのも気が引ける」
「ああ、なるほど」
言われて冒険者達は納得した。
仮面の存在がしようとしてる事に。
「構わんよ。
俺達も助けてもらったしな」
「そう言ってくれると助かる。
それに、人手が多い方が出入り口を突破しやすいだろうし」
「……なるほど」
わざわざ他の冒険者を助けにいく理由も、その言葉で分かった。
今、出入り口にはモンスターが殺到している。
それを倒さなければ外には出られない。
だったら、人手は多い方が良い。
「それじゃあ、なおさら助けにいかないと」
「分かってくれて助かる」
「でも、あんたなら一人でも突破できるんじゃないのか?
さっきみたいな事が出来るんなら」
「出来るだろうな」
即座に答えが返ってきた。
「やっぱり」
「けど、それも寝覚めが悪いしね。
中枢を破壊してそのまま放り出すってのも。
あんたらを見殺しにしてるようで気分が悪い」
「…………って、ここの崩壊、あんたがやったのか?!」
言ってる意味を理解して驚く。
そんな冒険者達に、仮面はあっさりと答える。
「ああ、そうだ」
「嘘だろ……」
「信じないか?」
「……いや、あんたなら出来るかもしれないな」
先ほど見た地面の隆起を見てそう思う。
あれだけの事が出来る魔術の使い手だ。
それなら、普通なら出来ない事もやり遂げるだろうと。
「となると、俺らがこういう風になってるのもあんたのせいって事か?」
「そうなるな」
悪びれもしない声が冒険者達の耳に入る。
それを聞いて彼等の表情が少しばかり歪む。
「だとすると、助けてくれた事を感謝するのもどうかと思っちまうな」
「こんな風にした原因が俺だからな。
それも仕方ないだろうよ」
「悪いとは思わないのか?」
「誰に対して?
ダンジョンの破壊は人類の願いだ。
壊して文句を言われる筋合いなんかない。
違うか?」
「いや、そりゃそうだな」
ダンジョンはモンスターの巣なのだから、出来るだけ早く破壊するべきである。
それは冒険者である彼等にもよく分かっていた。
食い扶持を失うのは困るし、現在のように外に出るのも困難になるのは勘弁してもらいたいが。
それでもダンジョン破壊そのものは、やるべき事ではあった。
「ただ、こっちの都合も考えてくれるとありがたかったな。
あと、出来れば外に出る方法も作っておいてくれると」
「そうするつもりだったんだけどな。
事前に根回ししてると面倒が起こるからやめたんだ」
「……じゃあ、ここの前にそういう事があったのか?」
「ああ。
別のダンジョンを破壊したんだが、そこの冒険者と喧嘩になってな」
「そりゃまた……」
それはそうだろうと思った。
「話にならなかったから、勝手にやる事にしたよ、色々と」
「それでここでも勝手にダンジョンを破壊したと」
「そうだ。
あんたらに話をつけてたら時間がいくらあっても足りない。
だから、勝手にやる事にした」
「酷い話だ」
「だろうな。
けど、おかげで予定通りにダンジョンを潰す事が出来た」
「…………」
もう何と言って良いのか分からなくなった。
文句もいいたい、かといってそれもまた筋違いに思えた。
「他の連中に断りを入れてたらこうはいかない。
好き勝手にやって正解だったと思うよ」
さらに続くその言葉に、冒険者達は絶句した。
自分達が無視されていた事にまず衝撃を受ける。
他人の事を全く考えてないのだろうと思った。
そうまでして自分のやりたい事を貫いてる事。
おまけに、それを実現させる力を持ってる事。
目の前の仮面を付けた者には、それをやってのけてる力がある。
自分達を軽く凌駕する力を持った存在である。
それらを冒険者達は理解し受け入れるしかなかった。




