120回目 どこでもこんな事が起こるというのは問題があるのではなかろうか
翌日。
トモルは再び別のダンジョンへと向かっていく。
学校近くのダンジョンを中心とした数十キロ圏内には、まだいくつかのダンジョンがある。
その一つへと向かっていく。
今日はそこを破壊するつもりだった。
冒険者などへの事前の通告などは、今回はしなかった。
機会があれば伝えるつもりではいるが、トモルの方から話しかけるつもりはない。
説得するのも説明するのも面倒だった。
それで時間を費やしてしまうのがもったいなかった。
既に夏休みのうちの数日を使ってしまっている。
同じ調子で数カ所も巡っていたら、それだけで貴重な時間が無くなる。
だったら、自分一人でやるべき事をこなしてしまった方がマシである。
そのつもりでやって来たトモルは、ダンジョンに到着するとすぐに中に入っていった。
他の冒険者達と同じようにダンジョンに入っていく。
その途中、トモルに絡んでくる者もいた。
怪しい風体をしてるのだから仕方ないのかもしれない。
何かにつけて因縁を付けようとする輩はどこにでもいる。
そういう連中からすれば、うってつけの標的に見えたのだろう。
トモルが小柄というのもある。
与しやすいと勘違いしたのだろう。
大人からすれば、しかも実戦で鍛えてる者達からはそう見える。
トモルが持ってる巨大な刀剣も目に入ってないようだ。
それを軽々と持ち運んでる事も、考慮の対象にはなってない。
そうして短絡的に絡んできて、絶望的な後悔をしていく。
絡んできた連中にトモルは何一つ容赦しない。
腕を掴み、肉と骨を引きちぎる。
足を踏み抜いて、骨ごと粉砕する。
絡んできた連中全員に、そのようにしていく。
たとえ直接手を出してこなくてもだ。
一蓮托生、連帯責任。
例外は一切作らない。
今回絡んできた者とその仲間は7人。
それらは全員、再起不能の怪我を負う事になった。
回復魔術を使えば治療は出来たかもしれない。
だが、魔術を使える者は少ない。
その少ない魔術師も、わざわざ善意で治療しようとは思わない。
仲間でない者達にそこまでする義理も義務もない。
トモルに手を出した連中は、例外なく地面の上でのたうち回る事になった。
誰にも助けてもらえず。
体を粉砕されて。
今後は再起不能の体で生きていく事になる。
それを見ていた者達は驚く。
一瞬にして冒険者が叩きのめされたからだ。
ダンジョンで生き残った者は、それなりの能力を持っている。
それらが瞬時に叩きつぶされれば、誰だって驚くだろう。
そんな騒ぎを見ていた者達は、その場で後ずさる。
そして、何歩か下がった位置で硬直する。
事が終わっても、元の位置に戻ろうとはしなかった。
目の前で起こった騒ぎの圧倒的な結末に言葉を失っていた。
瞬時に武装した冒険者を叩きのめす。
その戦闘力に恐れを抱いていた。
そんな周囲の様子を無視して、トモルは倒れた連中を巡っていく。
既にまともに動く事も出来なくなってる者達。
そいつらに、更に手を加えていく。
関節を外し、手足を無理矢理な形に組み合わせていく。
そうして、その状態で縛り上げていく。
その間、ゴキゴキと骨や関節が不気味な音をたてていく。
そうしてから、肉を潰すほどの力で縄を締め上げていく。
トモルに絡んだ連中は悲鳴を上げていった。
というより、叩きのめされてる最中から泣きわめいている。
痛てえ、痛てえと。
畜生畜生と。
だが、そんな声に応じて動く者はいない。
トモルの圧倒的な力を見た直後だ。
動き出せる者などいるわけもなかった。
まして、止めに入るなど。
それに、もともとトモルに絡んだのは泣きわめいてる連中である。
自業自得だ、と誰もが思った。
あるいは、そう思う事で自分に言い訳をしていた。
仲裁に入らず、ただ見ているだけでいるしかない事の。
それは仕方がないだろう。
周りにいるのは、あくまで一般人。
冒険者も含めて、取り締まりや仲裁を仕事としてる者ではない。
これが、治安維持に関わる者であれば、イヤでも止めに入るしかないが。
一応、ダンジョンの入り口には警備の衛兵がいる。
だが、彼等の任務はダンジョンの監視である。
その周囲に集まってる者達が起こす事件の解決ではない。
無駄に面倒に関わりたくない衛兵達は、基本的に町での出来事に無頓着であった。
自分達に面倒がふりかかってくるという場合には、多少はもめ事を鎮めようとはするが。
だが、今はそういう状況ではない。
トモルのやってる事は冒険者同士で起こした事である。
監視してるダンジョンで起こった異変ではない。
ならば、衛兵達が積極的に介入する理由は無い。
あったとしても、彼等は断固として拒否したであろう。
トモルと向かい合う事を。
こうしてトモルは、本日破壊する予定のダンジョンの前で、一躍有名人になる事が出来た。
ついでとばかりにトモルは宣言する。
「今日、これからこのダンジョンを破壊する」
それを聞いていた者達は、呆気にとられて何も反応をする事が出来なかった。




