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12回目 雌伏の日々を終え、今まさに出陣のとき……というほど大げさではないか <能力表記>

 モンスター退治の合間に村の外に出向いたりもする。

 やはり貴族同士の付き合いは無くすわけにはいかない。

 どうしてもトモルはそれに付き合う事になる。

 弟が生まれたので、いずれはそちらにこういった仕事をなすりつけようとは思ってるが。

 だが、生まれたばかりの赤子を外出につれていけるわけもなく、あと何年かは父のお伴が続くだろう。



 とはいっても、トモルの交友範囲は狭い。

 何せ初対面あたりで相手の子供と衝突する事が多い。

 だいたいにおいて相手の態度のせいではあるが、それが理由で関係が拗れる事がほとんどである。

 だから外出先でどこかの子供と仲良く遊ぶという事もない。

 他の貴族の子供と会えば、遊ぶより殴りあいになる事の方が多い。

 さもなければ、罵りあいだ。



 見えないように叩かれたり、読んでた本を取り上げられたり、といった事は後を絶たない。

 出向いた先には、相手の家の子供だけがいるのではない。

 近隣貴族の子供もいて徒党を組んでる事もある。

 そういう場合、人数で不利になる。



 地方の貴族の家に行くと、貴族同士ではなく、近隣の村の子供達が加わってたりする。

 庄屋や豪農などの子供なので、純然たる平民とは言いがたい立場の子供だ。



 町にいる貴族だと、その家の親戚の子供達が集まってる事もある。

 実質的な生活水準などは平民と同等だったりする者がほとんどだ。

 とはいえ、一応は貴族であるから交友の場に招かれるのだ。

 そして、町の中に親戚が住んでるので比較的簡単に集まる事ができる。

 こういた人数に頼った嫌がらせについては、だいたいどこでも発生する。

 呆れるしかない。



 もちろんトモルもやられてばかりではない。

 見えないように悪戯されたら、誰がやったか関係なくその場に居た全員に報復をする。

 一回やられたら、滞在中可能な限り反撃を繰り返す。

 子供だから大目にみよう、などという仏心なんて出さない。

 一回二回くらいは許そうとも思わない。

 そんな情けや穏便さなど通用する相手ではない。



 ほんのすこし気に食わないだけで因縁をつけてくるガキばかりだ。

 それこそ相手が死ぬまで追い詰めるつもりなのかと思うほど執念深い。

 だから全く手が抜けなかった。

 やり返さなかったら、逆にその方が面倒な事になるからだ。



 とはいえやり方は考えている。

 直接手を下せるなら鉄拳制裁も辞さないが、なかなかそんな機会はない。

 それだとかなり不利になってしまう。

 そういう立場なのがトモルの現状だ。

 家の地位や身分というのはどこまでもつきまとう。



 そういう立場と状況なので、拳骨などを用いたやり方は難しい。

 そこで、魔術で発生させた水をぶつけてやったりする。

 風を集めて叩きつけたりする。

 闇を作り出して暗がりに追い落としたりなどもする。

 こういう方法で可能な限り報復をしていった。



 魔術ならば多少離れていても発動させることが出来るので重宝した。

 そして、攻撃をされる事は分かってるので、倒したモンスターの核を持ち込んでる。

 可能な限り魔術の使用回数を増大させるためである。

 おかげで報復は余裕をもって行う事が出来た。



 そんな事を何度も繰り返していった。

 おかげで、だんだんと攻撃もされなくなっていく。

 一度でも手を出してきた者に、トモルは何度も何度も報復する。

 それこそ滞在期間中に休み無く、繰り返しだ。



 それが分かってくると、下手に手を出そうとはしなくなる。

 だいたいの子供は大人しくする。

 トモルを避けるようになる。



 それでも喧嘩を吹っかけてくる者には、泣き出すまで攻撃をくりかえした。

 そしてトモルは相手が泣いても止まらない。

 止まるつもりは無い。

 攻撃を何度も繰り返す。



 もちろん相手から見えない位置からだ。

 そこに陣取り、魔術で何度も何度も水をぶっかける。

 土を被せていく。

 その合わせ技で泥だらけにしてやったりする。



 当然、大人がいないところを狙ってやる。

 だから報復もなかなかされない。

 場合によっては、皆が寝静まった夜に、相手の部屋まで出向いて水と土をぶつけ続けた。

 朝、部屋が泥だらけになってるのを見て、相手の子供が泣き出す事もある。



 こうした努力をたゆまず続けた。

 おかげで、来訪(に伴うふざけた態度への報復)回数を重ねるごとに、トモルに近づく子供はいなくなっていった。

 独りぼっちということになるが、その方がありがたい。

 仲良く出来ない者と一緒にいるなんて、苦痛なだけである。



 そんなトモルであるが、危害を加えない者には特に何もしない。

 大人しい子供達とならばそれなりに接している。

 一緒に遊ぶことはそれほど多くはない。

 しかし、顔をあわせれば笑顔で挨拶をするくらいの間柄の者もいる。



 害意の無い連中ならば、それくらいはしている。

 それは貴族でも、平民でも変わらない。

 敵には厳しく。

 味方には優しく。

 接し方を相手によって変えている。



 だから同じ村の子供達から色々と話を聞くこともある。

 神社に通わなくなっても、接点が無くなったわけではない。

 そんな彼らからは、だいたい同じ話を聞く。



「今日はどうだった?」

 だいたい、トモルがそう尋ねる。

 そうすると、子供達はとたんに不満を顔に浮かべる。

「いつも通りだよ」

「あいかわらずだよ、タケジは」

 不満たらたらにそう答える。



「女の子の髪の毛引っ張ったり、習字してるときに紙を真っ黒に塗りつぶしてきたり」

「声をかけられてついていかないと殴ってくるし」

「トモル兄ちゃんがいなくなってから、あいつ本当に酷いよ」

 出てくる出てくる、文句が際限なく飛び出してくる。

 それらのほとんどは、タケジの横暴によるものだった。



(よくもまあ……)

とトモルも驚くやら呆れるやら。

 子供の事とて話半分に聞くにしても、見事なまでの暴君ぷりだった。

 いくらなんでもそれはないだろと思いたくなる。

(本当に人間なのか?)

 タケジの所業が人間とは思えなかった。



 そこまでやるのかと思う事ばかりである。

 目の前の子供達が嘘を吐いてるのではないかとすら思ってしまう。

 だが、話半分どころか、誇張九割だとしても、残る一割の部分が問題だった。



(放置できねえな)

 どうにかする義務はないが、さすがに目に余る。

 どこかで何かしらやっておかないと大変なことになりそうだった。



 それでもトモルはすぐには動かない。

「あと少しだけ待っててくれ。

 俺が何とかするから」

 そう言って子供達をなだめ、時間を稼ぐ。

 モンスター退治を続け、経験値をためている最中だった。

 おそらく今の段階でもタケジなら簡単に叩きのめすことは出来るだろう。

 しかし、それでもまだあえて手を出さない。

 出来ればもう一つレベルを上げておきたい。



 圧倒的な余裕をもってタケジを叩きのめすためだ。

 ついでに取り巻きも壊滅させておきたかった。

 手加減は一切しない。

 死ぬならそれでもかまわない。

 悪さをしてる奴を放置することは出来ない。



 子供達がかわいそうというのもある。

 それを差し引いても、タケジを放置できない。

 このままでは集落全体、下手すれば村全体の問題になりかねない。

 どこかで一気に物事を沈静化させねばならなかった。



 そのためにも実力が必要になる。

 おそらく一度に何人も相手にすることになる。

 それでも確実に勝てる保証を作っておかねばならない。

 そのためのレベルアップである。



(怪物退治に集中できればいいんだけど)

 何せ外出などが多い。

 それにつき合わされればどうしても時間を割けなく。

 また、雨の日なども外出は出来ない。

 何をしにどこに行ってるのかと誰もが疑問を持つだろう。



 視界も悪いし、動きもとられる事になるから、モンスター退治にも向かない。

 なので、どうしても活動出来る日は限られている。

 たまに野良仕事の手伝いもさせられるし、馬や牛の世話もある。

 領主の息子とはいえ、最下級ともなればそういった仕事もせねばならなかった。

 半分は庶民みたいなものである。



 なのでモンスター退治はどうしても制限されてしまう。

 順調にいけば二ヶ月で終わるはずだったレベル2までの道。

 しかし、実際には二倍近くの時間がかかってしまった。

 それもこれも、色々と連れまわされてるからだ。



 レベル3になるにはどれくらいかかるか見当もつかない。

 それでも経験値は確実に増えていく。

 レベル2からレベル3になる日もやってくる。



 それが来たのは、前回のレベルアップから7ヶ月。

 待ちに待ったその瞬間がやってきた。





<< 状態確認 >>



柊 トモル


4→ 5歳 男


レベル2 → 3


体力: 60/200 →  90/300


健康: 60/200 →  90/300


敏捷: 60/200 →  90/300


智慧: 60/200 →  90/300


意志: 60/200 →  90/300


共感: 60/200 →  90/300



一般教養 レベル10


知識:地理 レベル4 → 5


知識:社会 レベル4 → 5


発見/探知 レベル1 → 3


潜伏/隠密 レベル1 → 3


運動 レベル7 → 8


刀剣 レベル5 → 6


斧 レベル1 → 2


格闘 レベル3 → 4


基本魔術 レベル4 → 6


治療魔術 レベル0 → 3



知識:日本 レベル8


パソコン操作 レベル15




振り分け可能技能点数: 1 → 4点




<< 状態確認 >>





 年齢も上がり、技術ものびている。

 途中でおぼえた治療魔術も伸びている。

 転んで出来た擦り傷程度なら簡単に治せるようになった。



 出来ればもっと様々なレベルを上げたいところだ。

 しかし、今はこの程度で満足しておく事にする。



 なお、治療魔術を得るために、振り分け可能技能点を用いた。

 その際、レベル1を得るのに1点消費した。

 残りの点数が1点になってるのはこの為だ。

 そうして消費した分は、今回のレベルアップで補充されたようだった。



(一気に3点か。

 てことは、総合レベルアップの時に総合レベルと同じ数の点数が入るのか?)

 結果からするとそうだと思われた。

 なお、次のレベルに必要な経験値であるが。



<< 経験値: 21/30000 >>



 ありがたい事に、二倍とはならなかった。

 前回の必要経験値に1万点上乗せされた3万点である。

 それでもかなり膨大な経験値が必要だが、決して無理や無茶な範囲ではない。

 今のペースなら1年余りで十分次のレベルに到達出来る。



 能力値も上がったし、以前よりも戦闘は楽になるだろう。

 それと技術のレベルアップもあってか、最近はモンスターを発見するのも楽になった。

 何となくだが、痕跡などを見つける事が出来るようになっている。

 それらによるモンスター発見の増加もあわせれば、思ったよりも多くのモンスターを倒し、予定より早くレベルアップが出来るかもしれない。

 期待と夢がふくらんでいく。



(けど、それより先に)

 片付けるべき問題について考えていく。

 神社に出向かなくなって一年。

 皆にも我慢してもらい続けてきた。

 その清算をしなくてはならない。

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