119回目 一人反省会、ただし後悔は無いし自分が悪いとも思わない
破壊したダンジョンから、とりあえずの住処へ帰還する。
借りてる個室に食事を持ち込み、一人で腹をふくらませていく。
手下の冒険者と食事を共にする事は無い。
仮面を外して素顔をさらす事になるからだ。
素性を明かすのは、現段階では考えてない。
得策と思えないからだ。
どこで何がどうなるか分からないのだから。
この日のダンジョン破壊、その直前の出来事からも明らかである。
(どこで衝突するか分からないからなあ)
今日、その事を身をもって知った。
そんなつもりは無くても、何がどうなるかは分からない。
そうするつもりはこれっぽっちも無かったのだが。
結果として仲違いする事になってしまった。
出来れば手下に加えて手勢にしたかった。
勢力を増やしたかった。
しかし、その目論見は潰えてしまった。
(上手くいかないもんだな)
もうちょっと上手くやれれば良かったのだろうが、今更である。
取り返しが付くわけもないので、あとは野となれ山となれだ。
今日の出来事が今後に響く事になるだろう。
けど、それならばそれで、どうにかしていくしかない。
(それよりも……)
今は起こってしまった事を後悔してる暇は無い。
やってしまった事、起こってしまった事から何を考え、これからどうするかである。
(まあ、冒険者からすれば、ダンジョンを壊されちゃたまらないか)
彼等にも生活があるのだから当然である。
だからトモルも路銀を稼がせてやろうとは思っていた。
しかし、冒険者達がそれだけで納得するかというと、やはり無理があった。
いきなりやって来た者に、
『稼がせてやるから、別の所に行け』
なんて言うのはさすがに無理がすぎたのだろう。
ここはトモルにも非がある。
が、それについてトモルは全く反省しない事にもした。
(だからって、相手に譲歩してもなあ……)
やろうとしてる事を考えれば、それは悪手である。
限られた時間の中で最大限の効果を発揮せねばならない。
時間をかけてもいられないのだ。
悪辣だろうが何だろうが、効果のある方法を用いていくしかない。
それが冒険者を始めとした、ダンジョンで食ってる者達を路頭に迷わせる事であってもだ。
(まあ、そうするとして。
実際に何をどうやっていけばよいのやら……)
ここも悩みどころである。
敢えて、冒険者とその周辺の事業者達を。
これらを見捨てていくとしよう。
だが、それだけだと冒険者や様々な事業者達が離散してしまう。
出来ればそれらをトモルの所に吸収したいのだが。
(そう上手くはいかないか)
行き先を伝えてそこに向かわせる、というわけにもいかないようだ。
それが出来るなら、今日のような衝突は発生しなかっただろう。
受け入れ先となる場所があると伝えても、彼等は納得せずにトモルに翻意を求めてきたのだ。
この先も同じ事が繰り返される可能性が高い。
そんな者達を上手くまとめる事が出来るとは思えなかった。
(いや、難しく考えないでいいか)
色々と考えていく中で、ある種の達観、あるいは諦観に到達していく。
どうせ、どうにもならないのだ。
時間をかければともかく、そんな余裕などない。
ならばもう諦めるしかない。
どう考えても不可能なのだから。
上手く立ち回ればどうにかなるかもしれないが、それもまた手間がかかる。
今現在、使える手駒が自分一人なトモルには、陰謀暗躍などやれるものではない。
ならば、いっそ全てを諦めてしまうのも手段の一つである。
(それがいいか)
それから暫く考えて、やはり同じ結論に到達する。
ダンジョン破壊と冒険者(及び、その周辺にいる事業者)の両立は諦める。
ただひたすらにダンジョン破壊だけをしていく。
それだけならば手間もかからず達成可能だ。
(他は……そのついでに出来ればいいか)
割り切るとあとは楽だった。
少なくとも気分は晴れていった。
この後書きを書いてる時点までにもらった誤字脱字報告の部分は修正しました。
毎度ありがとうございます。




