117回目 ダンジョン、ボス殲滅後の撤退 3
願いも虚しく、出入り口に近づく程にモンスターは増えていった。
逃げ出す為だろう。
それでいて、トモルを見つけると襲いかかってくる。
モンスターとしての本能なのだろう。
面倒だが、処分しなくてはならない。
手にした大型の山刀で叩き切りながら先へと進む。
残念ながら、核を回収してる余裕は無い。
そんな暇があるなら一歩でも先に進んでいく。
寄り道は極力省かねばならない。
だが、それも出入り口に到着した所で止まる。
出入り口に殺到してるモンスターで道がふさがれていたのだ。
これでは突破する事も出来ない。
しかも、手近にいたモンスターから、トモルの方に振り向いて飛びかかってくる。
命がかかってる状況だが、攻撃本能はやはり相変わらずだ。
あるいは、出口がふさがってるから、やぶれかぶれになってるのかもしれない。
仕方がないのでトモルは周囲に火炎を張り巡らせていく。
周りの草木と共にモンスターを灰燼にしていく。
更に燃え移った炎を操作して、周囲に拡大拡散していく。
トモルの周囲には、炎の渦が発生する。
それがモンスターを巻き込み、消し炭を量産していった。
トモルの能力の高さのせいだろうか。
操作されてる炎の規模や火力は、一般の魔術師を超えたものになっている。
通常の魔術師では、モンスターを巻き込んで燃やすなんて事は出来ない。
せいぜいモンスターの体の一部を焼き焦がす程度でしかない。
生み出す炎も、握り拳くらいの大きさである。
それを作って敵に撃ち込み、それで終わる。
しかしトモルはそれを、自分を中心とした数十メートルの範囲までひろげている。
普通の魔術師ではこんな芸当は出来ない。
しかも、そこから更に周囲に引火していく。
被害範囲は留まるところを知らない。
市街地などで決してやってはいけない行為である。
だが、ここはダンジョン。
周りはモンスターだらけ。
控える必要も遠慮する必要もない。
トモルを中心として発生した炎の渦。
それはダンジョンの内部にひろがっていく。
それに巻き込まれて多くのモンスターが死んでいく。
しかもそれが、出入り口の前で発生している。
逃げようとするモンスターは、その炎の中を突っ切っていかねばならない。
もちろん、そこに飛び込めば間違いなく死ぬ。
それでも生き残りをかけて。
あるいは、凶暴性に従ってトモルにめがけて。
モンスターは一斉に炎の中に突入していく。
そして例外なくどれもが炎にまかれて死んでいった。




