116回目 ダンジョン、ボス殲滅後の撤退 2
とにかく逃げねばならない。
その為に、トモルは低下魔術をかけていく。
周囲に集まったモンスターはそれに取り込まれていく。
能力が一気にさがり、動きが鈍くなる。
それを見てトモルは、それらを振り切って逃げ始めた。
集まってきたモンスター。
それらを全てを相手にしてる時間はない。
中枢であるモンスターが死んだのだ。
ダンジョンは崩壊を始めている。
それに巻き込まれるわけにはいかない。
だから、悠長に戦ってるわけにはいかなかった。
その為に、相手の能力を下げていく。
能力が低下すれば追いかける事も難しくなる。
突破して逃げる隙も出来る。
殺傷力がある魔術で倒すよりは、今はその方が効果があると判断した。
とはいっても、さすがに道はつくらねばならない。
そうしなければならないくらいには、大量に集まってるのだ。
動きが鈍くなった敵に向かって、一直線に火炎を走らせる。
それに巻き込まれ、モンスターが燃えていく。
次いで、突風を吹き込んで炎を拡散する。
それによって一時的に炎が増大し、周囲を焼き尽くしていく。
火種になったモンスター達は、炎に巻き込まれて消し炭に変わっていく。
生えていた雑草や雑木ともども、モンスターは土と同化していく。
そうして出来た道を走り抜けていく。
強化した身体能力を使って。
集まっていたモンスター達の中に、一筋の道が出来上がる。
それも周囲にいたモンスター達によってすぐに塞がれる。
しかし、その動きは鈍い。
道が消える前にトモルが走り抜ける。
モンスターの立ちふさがる壁にもならない。
そうして集まってくるモンスターを凌ぐ。
けれども、脱出の手間は無くならない。
出入り口まではまだ遠い。
モンスターの集団を抜けても、そこから更に2キロか3キロの距離がある。
その距離を走り抜けるのも大変だ。
途中でモンスターにも遭遇する。
そのほとんどは、ダンジョンから逃げだそうとしてるものたちだ。
それらと遭遇して戦闘になってしまう。
こんな時でも人に襲いかかる本能は変わらないようだ。
出来れば出会いたくないが、そうもいかない。
もともとモンスターがあふれるダンジョンである。
どこかに必ずモンスターはいる。
しかもそれらが今、一つしかない出入り口に向かってる。
ダンジョン内のモンスターとイヤでもそこで遭遇していく事になる。
進めば進むほど、モンスターは増えていくだろう。
前から、左右から。
そして後ろからも。
あちこちから合流してくるモンスター達。
それらを蹴散らし、撃破し、切り捨てていく。
中枢を破壊しても、それでダンジョン攻略は終わりではないのだ。
(出入り口前で戦闘になるな)
そこに殺到してるであろうモンスター達。
それを倒さねば外に出られない。
そう考え、覚悟をしていく。
どれ程集まってるかは分からないが、そこそこの数はいるだろうとは思われる。
それらを撃破して無事に外に出られるかどうか。
どうにかしてダンジョンの崩壊から逃れたいものだった。
色々と不安要素が多い。
だが、やるしかない。
幸い、ダンジョン崩壊は思ったほど早くはない。
暢気になれる程では無いが、多少は余裕を持って行動出来る。
それだけは救いだった。
悠長にしてもいられないが。
(上手くいけばいいけど)
ダンジョンからの脱出。
その邪魔になるモンスターの粉砕。
道の確保。
それがどれだけ上手く出来るのか。
(上手くいけばいいけど)
こればかりは願うしかなかった。




