114回目 ダンジョン、ボス攻略 2
巨大人面虫の胸部。
そこに突き刺さった刃。
それは半分ほど相手の体にめり込んだ。
ほとんど切断されてるようなものだ。
だが、まだ命を奪うには至ってない。
顔に苦痛を浮かべ、口から悲鳴。
傷口から大量にあふれる緑の血液。
そうしながらも、前肢と後ろ肢を激しく振って、まだ生きてる事を示している。
モンスターだけあってなかなかしぶとい。
そんなモンスターに二撃目を入れようと、一旦刀剣を抜く。
そして二発目、三発目を入れていく。
続けて繰り出して確実に命を削らないといけない。
でないと、開いた傷口がふさがってしまう。
実際、巨大人面虫の傷はふさがれていっている。
血液の流出も止まっていく。
続けざまに何度も攻撃を仕掛けないと、完全回復しかねない。
トモルは遠慮も容赦もなく、攻撃を繰り出していく。
相手もそんなトモルに応戦しようとする。
自由に動く二つの前肢でトモルを攻撃しようとする。
かなりの素早い動きだ。
並の人間なら目で負う事も出来ないかもしれない。
だが、トモルはなんとかその動きをとらえている。
そして、身をかわし、武器で弾いていく。
このダンジョンのボスたるモンスター。
その攻撃は全く当たらない。
それどころか、繰り出される前肢にあわせて、トモルは武器を打ち合わせていく。
鋼鉄の刃をぶつけられた巨大人面虫の前肢は、それで破損した。
胴体よりは細いそれは、刃によって千切り切られていった。
その上で、胴体にも、四本の足にも切りつけていく。
巨大人面虫は身動きがとれなくなる。
体を切断するほどの斬撃も受けて、回復も追いつかなくなっていく。
そうなると、後は一方的な攻撃が続く。
それはもう、戦闘と言えるものではなかった。
一方的な殺戮でしかない。
しかし、容赦できるものではない。
相手はダンジョンの中枢たるモンスター。
本来なら一方的に倒されるような存在ではない。
トモルの能力が異常に高いから出来る事だ。
普通に戦っていたら、それなりのレベルの冒険者でも、何人もの死者を出している。
それくらい強力な敵なのだ。
そんな敵を、可哀想だからと助けるわけにはいかない。
しっかりとトドメはささねばならない。
でなければ、モンスターの被害を多くの者が受ける事になる。
そうはさせじと、トモルは分厚い刃をたたき込んでいく。
もっともそれは、幾らか憂さ晴らしの気配もあった。
ダンジョンに入る前にあった、冒険者とのいざこざの。
さすがに簡単に感情が割り切れるものではない。
そんな鬱憤晴らしもかねて、巨大人面虫は叩き切られていった。




