110回目 双方の立場がもたらす決裂 3
冒険者の誘致。
それは失敗に終わりそうだった。
徒労感が激しい。
だが、それはそれとして、やるべき事をやっていく。
幸い、これまでの行動でモンスターはだいぶ片付いた。
冒険者に渡す路銀調達の為にやっていたのだが。
それも雑魚の一掃という面では意味があった。
これでダンジョン中枢を攻撃する時に、余計な邪魔は入らない。
不利な条件が一つ消える。
完全に雑魚が消えたわけではないから、多少の増援はやってくるだろうが。
それでも、数を減らした意味はあるはずだった。
トモルはそのままダンジョンに入り、中枢を目指す。
冒険者の事など目にもくれない。
それに関わってる時間がもったいなかった。
残された冒険者達はどうしようか考える事になった。
今日もトモルを追いかけてダンジョンに入るか。
それとも、大人しくしておくか。
出来れば稼ぎを手にしたい。
だが、トモルに出会うのも気まずい。
下手すれば命に関わるかもしれない。
そう思うと、ダンジョンに踏み込む事も出来なかった。
「どうする?」
誰かが声をあげる。
だが、応える声はない。
どうすればいいのか?
それが分かれば、この場に突っ立ってなどいない。
だが、いつまでもその場に留まってるわけにもいかない。
何かしら行動はしなければいけない。
ダンジョンに入るにしろ、今日は帰るにしろ。
あるいは酒場で飲んでいるにせよ。
いつまでもこの場に留まるわけにもいかない。
「俺は、今日は帰る」
「俺も」
「俺もそうする」
そう言って立ち去る者が出てきた。
それらは宿屋へと向かっていく。
「どうする?」
「そうだなあ」
「飲みに行くよ、俺は。
そんな気分じゃねえけど」
「確かに。
でも、飲まないとやってらんねえな」
「ああ」
そう言って昼間から酒場に向かう者も出てきた。
「一応入るか?」
「そうだな、今日の稼ぎも欲しいし」
「でも、昨日みたいに獲物を置いててくれるかな」
「さあな。
でも、それなら戦ってモンスターを倒せばいい」
「それもそうか、俺達そういう仕事してるもんな」
あらためて武器を構えてダンジョンに入っていく。
そういう者もいた。
「どうすっかな」
ある者はそれらとは別の事を考えている。
トモルが言っていた事。
別の場所、別のダンジョン。
その事を考えていた。
「ここを攻略するっていうし」
出来るかどうかは分からない。
だが、あれだけの強さがあればやってしまうかもしれない。
そう考えると、このダンジョンに留まる必要も感じられない。
「行ってみるか」
ならばと、一足先にトモルが言ってたダンジョンへと向かっていく。
幸い、路銀は稼いだ。
目的地までの不安はない。
トモルが中枢に向かってる時。
ダンジョンの外にいた冒険者はそんな風に行動していった。
何をしたいか、何をするべきか考えながら。
あるいは、思いつきのままに動いていった。
そんな彼らの事など全く知るよしもなく。
トモルはただダンジョンの中を突っ走っていた。
ひたすら中枢を目指して。




