11回目 それでもまじめに励む日々 <能力表記>
親に呼ばれてあちこち連れ回される日々。
それでも、モンスター退治は続けていく。
さすがに雨が降れば休みはする。
そんな時でも勤勉さを発揮する事は無い。
そういう日は自宅学習に精を出す。
ただ、出来るだけ外に出ることにしていた。
そんなモンスターを倒す日々をおくっている。
レベルが上がったのは、そんな日々の中での事である。
モンスター退治を始めて三ヶ月目が終わろうとしていた頃だ。
ようやく経験値が規定の値に到達し、レベルアップを迎える。
その結果の能力上昇などは次のようになっていた。
<< 状態確認 >>
柊 トモル
4歳 男
レベル1 → 2
体力: 30/100 → 60/200
健康: 30/100 → 60/200
敏捷: 30/100 → 60/200
智慧: 30/100 → 60/200
意志: 30/100 → 60/200
共感: 30/100 → 60/200
一般教養 レベル10
知識:地理 レベル3 → 4
知識:社会 レベル3 → 4
発見/探知 レベル0 → 1
潜伏/隠密 レベル0 → 1
運動 レベル6 → 7
刀剣 レベル4 → 5
斧 レベル0 → 1
格闘 レベル2 → 3
基本魔術 レベル3 → 4
知識:日本 レベル8
パソコン操作 レベル15
振り分け可能技能点数: 0 → 2点
<< 状態確認 >>
能力値がようやく伸びてくれた。
この伸び方がこの世界において普通なのかどうかは分からない。
だが、今までより能力が上がった事は確かである。
実際、体の動きが今までと違う。
考えというか、書籍などを読んでの理解力も跳ね上がった。
今までにない考え方も出来るようになっている。
直観的な感知力も上がっている。
視力や聴力などもだ。
(これがレベルアップか)
その効果を実感した。
また、技術も幾つかレベルが上がっている。
これらはモンスター退治を続けた結果だろう。
地理や社会も上がってるのが不思議だったが。
これは父親に連れられてあちこち引っ張られた結果かもしれない。
書籍を読んだ結果かもしれないが、それだけが理由ではないような気がする。
はたしてどれだけ意味があるのか分からなかったが。
とはいえ、悪い事ではない。
出来る事が増えていくのはありがたい。
ただ、次のレベルに上がるために必要な経験値を見ると、さすがに唸ってしまう。
<< 経験値: 16/20000 >>
レベル1からレベル2に上がった時に、経験値1万を消費した。
端数の16点というがそのまま残ったのだろう。
そして、次のレベルに上がるために必要な経験値である。
(2万かあ……)
さすがにこれはびっくりするしかなかった。
1万点でも3ヶ月ほどかかっている。
それが二倍である。
この調子でいくなら、半年先までレベルアップはお預けになる。
この世界におけるレベルアップの難しさがよく分かる。
(てことは、レベル3の次は、4万点が必要になるのか?)
二倍ずつ必要経験値が増加するならそういう事になる。
そこがどうなるか今は分からないが、かなり険しい道になりそうだった。
気になるのは、振り分け可能技能点数である。
レベルアップで増加したこれは、各技能の修得に使えるようだった。
既存の技術レベルを上げても良い。
未修得の技術を手に入れても良い。
そこはかなり自由に使えるようだった。
実際、修得可能技術はかなりの数になっている。
学習や経験で得られるものではあるのだが。
先にレベル1でも取っておけば後が楽になりそうだった。
何も分からないのと、少しでも下地があるのとでは大きく違う。
ただ、どんな技術をとれば良いのかまだ判断がつかない。
必要と言えば全部必要になってしまう。
その中から厳選していかねばならない。
なので、何から始めるべきか悩んでしまう。
ステータス画面にずらっと並んだ技能一覧を見て、あれこれ考えてしまう。
そして出てきた結論は、
(あとにするか)
であった。
(今すぐ決める必要も無いみたいだし、必要になった時に取ればいいや)
今は手持ちの技術で問題がないという事でもある。
無理して訳の分からないものを手に入れる必要は無い。
今の時点で身につけておけば、今後の学習によるレベル上昇も楽にはなるだろう。
だとしても、使いどころのないものをとってもしょうがない。
(まあ、焦らずじっくりいこう)
特に急ぐ必要もないので後回しにしていく。
そして、隠れて行ってるモンスター退治を更に続けていく。
周りの者達はどこに何をしに行ってるのか気にはなるらしい。
しかし、家の中でくすぶってるよりは良いと思ってるようだった。
神社に通わなくなって、トモルの活動範囲というか外に出る理由は大きく失われている。
近所の子供と遊ぶ事はあっても、それも神社から帰ってくる昼下がりまではお預けだ。
これでは家の中でだらけてしまうかもしれない。
幸いそうなってない事で、両親も周りの者達も安心はしてるようだった。
実際は危険な事をやってるので、是が非でも家に引きずっていくべきだろう。
しかし、誰もそこまでは考えていない。
モンスターを倒しにいってるなど、彼等の想像の範囲外である。
モンスターの相手はそれだけ危険である。
子供には危険を常に伝えているし、子供もそんな恐ろしいものに近づこうとしない。
だからこそ、彼等はトモルがしてる事を知らずにいた。
モンスター退治は順調で、成果を着々とあげていた。
レベルと共に能力が上がった効果は絶大で、攻撃も魔術も威力が向上している。
さすがに一撃で倒せるほどではないが、鉈や手斧による攻撃は、足などを簡単に吹き飛ばすようになった。
魔術のほうも、発生させる光の量が大きくなっている。
これならば、と思って一度モンスターに魔術の火を投げつけてみた。
それもかなりの威力になっていた。
モンスターバッタ相手なら、それだけで体の一部を燃やす程である。
ただ、周りの草木に火が燃え移る可能性があるので、そうそう使えるものではない。
やはり光による目くらましが今のところ最善の手段だった。
それか、土を隆起させて下から攻撃するかである。
瞬間的に土を爆発的に吹き上げる事で、バッタなどは腹から一撃を受ける。
そのまま吹き飛んでしまうほどだ。
なのだが、痛みを感じないのか、バッタはそのまま動いていく。
相当な衝撃を受けてるはずなのに、空中で翅を広げて滑空していく。
そして、着地してそのまま逃亡したり、トモルに向かってきたりする。
足を欠損してる事もあるので、全くの無傷というわけではない。
だけど、これなら目くらましのほうがよっぽど効果がある。
今少し威力が上がるまで、他の魔術はあまり効果的ではない。
風や水は、軽く吹き飛ばすか水浸しにするくらいだからお話にもならない。
まだ暫くは目くらましの光に頼る事になりそうだった。