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【完結】なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?  作者: よぎそーと
第4章

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108回目 双方の立場がもたらす決裂

「俺には俺のやりたい事がある。

 そちらに合わせ切れん」

 これがトモルの答えだった。



 トモルが進むのが速くて、冒険者達が追いつけない。

 その言い分はよく分かった。

 だが、それで足を止めてもいられない。

 さっさとダンジョンを破壊したいのだから。



 そうして冒険者をこの場から追い出したい。

 追い出して、上手く実家の柊領に誘導したい。

 それが出来なければ意味がない。



「これ以上、俺にはどうしようもない」

「やっぱり、駄目か?」

「無理だ」

「そうか」

 冒険者もそれでおさめようとした。

 あまり無理強いをするつもりはないのがトモルにも分かった。



 話しかけてくる冒険者も分かっているのだ。

 要望を伝える事は出来る。

 だけど、歩み寄りなどは無理だろうと。

 それが出来る上手いやり方が見つからないのだから。



 だいたい、最初に言われてる。

 ダンジョンを攻略する、破壊する。

 だから別の所に移ってくれ。

 その為の路銀を稼がせると。

 これが最大の妥協点なのだろう。



 そして冒険者達は路銀を手に入れている。

 話に聞くダンジョンに向かうには十分な程に。

 これ以上を求めるのも無理があった。



 冒険者の代表格はそう言って引き下がろうとした。

 話し合いで時間を浪費するのももったいないからだ。

 それより、さっさとダンジョンに入って今日の稼ぎを手に入れたかった。

 そもそもとして、この話し合いも意味があるとは思って無い。



 しかし、他の冒険者から要望があったのだ。

 どうにかならないかと。

 ついていくのが大変だと。

「どうにもならないだろうな」

 代表格の冒険者はそうこたえた。

 トモルが話を聞くとは思えなかったから。



 ただ、それはそれで言うだけ言ってみようという事にもなった。

 駄目でもともとである。

 言うだけ言って、それで駄目なら諦めもつく。

 変に「もしかしたら」という希望を持ってる方が、余計な問題につながりかねない。

 代表格の冒険者としては、そこがはっきりすればそれで良かった。



 その思惑は当たった。

 トモルは駄目と言ってる。

 ならば、これ以上無駄にはなしをする理由はない。

 話が終わったので、あとはダンジョンに潜るだけ。

 代表格はそう考えていた。



 だが、そこまで物わかりの良い者だけではない。

 納得のいかない者だっている。

 そして、そういう人間は得てして多数派だ。

 その一人が声を荒らげた。



「勝手な事言うなよな!」

 冒険者の一人が叫び声をあげた。

 その他大勢の中にいた一人だ。

「ダンジョンを壊すとか言って。

 俺達の事を考えてんのかよ!」

 その声に周囲は一度静かになった。



 トモルは呆気にとられた。

 まさか、ここに来てそんな事言うのかと。

 同時に、こんなもんだよなとも思った。

 やはり、人間は自分の都合しか考えないと。



 代表格の冒険者は顔が青くなった。

 上手く……かどうかは分からないが、話がまとまったところだ。

 にもかかわらず、それを覆すような事をする奴が出た。

 これでは治まるものも治まらない。

 最善ではないにしても、とりあえずまとまったのだ。

 それがご破算になってしまった。



 そうなったらどうなるか?

 今よりもっと酷い結果にしかならない。

 相手との力の差があれば特に。



 そんな代表格の考えを無視して回りも動く。

 叫んだ者に呼応するように、大きな怒号が生まれた。



「そうだそうだ!」

「何やってんだよ!」

「稼げなくなったらどうすんだ!」

 そんな感じであちこちから声があがる。

 全ての声が混合され、何を言ってるのか分からなくなる。

 それを見て聞いて、トモルは笑うしかなかった。



(やっぱり、ただの怒鳴りあいか)

 人間の言う話し合いなど、所詮こんなものだと。



「おい、待て!」

 代表格はどうにか冒険者を抑えようとする。

 それが無駄だと知りつつも。

 そしてトモルに、

「済まない、どうにか落ち着かせるから────」

 この場はいったん退いてくれ、と言おうとした。



 その前に突風が吹いた。

 それが冒険者達に叩きつけられる。

 体が吹き飛ぶほどではないが、身動きがとれない。

 気を抜くと転んでしまう、それくらいの風力だった。



「ふざけるな」

 風がやむ。

 それに続いてトモルの声があがる。

 押し殺した、怒りの籠もったものだ。

 それを聞いて叫び声をあげた冒険者は震えた。

 圧倒的な強さから出る威圧感。

 それに誰もが凍り付く。



 そんな冒険者達に冷めた声を投げつける。

「ダンジョンはお前らのものか?」

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