105回目 おいてけぼり 2
冒険者達の心配をよそに。
トモルはダンジョンを駆け巡る。
体力と気力が続く限りダンジョンを荒らし回る。
手当たり次第にモンスターを倒し、内部を綺麗にしていく。
圧倒的な破壊力。
凄まじいまでの殲滅力。
それはモンスターの生産速度を上回る。
何せ一日で大量のモンスターを撃破するのだ。
後から後から増産されるモンスターといえども、補充がおいつかない。
そんな調子で暴れ回るので、さすがにトモルも疲れてくる。
一日の終盤が近づくと、疲労を感じてくる。
一人でモンスターを駆逐しまくってるのだから当然だ。
だが、魔術についてはさほど問題無く使用していく。
倒したモンスターからはぎ取る核が補ってくれる。
冒険者の為に残してやらないといけないが、問題にならない程度にトモルも回収していた。
そうして手に入れた核でモンスターを殲滅していく。
大群で襲ってくるものは、魔術で一気に殲滅する。
少数ではあるが、比較的大型で強力なモンスターは、手にした武器で撃破していく。
卓越した能力の前では、そこらを徘徊してるモンスターなど相手にならなかった。
そうして一日が終わっていく。
それと共に、モンスター退治も終了する。
作業が終わると、トモルはすぐにダンジョンから出る。
冒険者達の事を待ちはしない。
能力差があるので、冒険者の歩みは遅い。
待ってたら時間を食ってしまう。
これから寝床にしてる宿屋まで、数十キロの距離を走らねばならない。
時間は一分一秒であっても惜しい。
なので、他の者達の帰りを待つことなく、トモルも帰宅する。
報告・連絡・相談といった仕事における意思疎通には反する。
だが、そもそも難しい取り決めなどしてない。
トモルは先行してモンスターを倒す。
冒険者はそれを追いかけて核を回収する。
ただそれだけだ。
相談するべき何かがあるというわけではない。
というより、それらは主に冒険者の間で必要になってるものだ。
トモルについていく為に。
効率的に作業を行うために。
手にした核を適切に配分するために。
彼らは自然と話し合いをしなくてはならなくなった。
そう意識してるわけではないが、報告・連絡・相談を自然と行なっている。
それにより彼らは、初日よりかなり効率的に動くようになった。
また、自然と団結や協力関係を作っていった。
仲良くやっていくほどではないが。
それでも、いがみ合いなどはなりを潜めている。
そんな事をしてる暇など無いからだ。
そんな冒険者達がようやくダンジョンから出てくる。
トモルが立ち去ってから一時間以上過ぎたあとだ。
それでも彼らの仕事は終わらない。
「おーい、核を売りにいくぞ」
「はいよ。
金の配分はどうする?」
「この前と同じでいこう」
「分かった。
それで、明日は?」
「いつも通りの時間にここで良いんじゃないか?」
「それもそうか」
そんな風に確認しあいながら、明日に備えていった。
彼らも彼らで疲れてる。
酒を飲み干して気勢をあげるどころではない。
さっさとベッドに入って眠りこけたかった。
そう思うほどに彼らは疲れていた。




