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10回目 主な仕事はモンスター退治でないから仕方ないが

 荷物を隠し場所に置いて家へと戻る。

 それから食事などをすませて部屋に戻り、能力を確かめていく。

 さすがに一日で目立った変化はない。

 レベルは当然だが、技術もそのままである。

 だが、確実に変わってる部分もある。



(経験値が増えたな)

 能力の片隅に書かれている経験値が増加していた。

 今、それは始める前より250点増大している。

 もともとあった分とあわせて、700点を超えている。



(となると、モンスター一体で50点てところか)

 それが多いのか少ないのかは分からないが、成果は着実にあがっている。

 ただ、レベルの上昇はかなり遠いのも分かった。

 経験値は次のように表記されている。



<< 経験値: 713/10000 >>



 おそらく、右側の数値がレベルアップに必要な経験値なのであろう。

 モンスター一体で50点だとすると、レベルアップには200体のモンスターを倒さねばならない。

 一日5体として、40日はかかる事になる。

 それでも桁違いに上昇速度はある。



 今までの人生で得た経験値が、おそらくモンスター分を加算する前のものだったのだろう。

 4歳児の経験など高が知れたものだが、それでも生まれてから4年で得た経験値を軽く凌駕しようとする程の勢いで経験値が入る。

 モンスター退治によってレベルがどんどん上がるという話も納得がいくものだった。

 確かにこれなら普通に暮らしてる者達よりも高レベルになるだろう。

 普通に生活してたら、レベル2になるまでどれだけ時間がかかっていたのか分からない。



(あと40日か)

 順調にいけば、それでレベルが上がる。

 そうなれば、子供達の中では優位性を保てるだろう。

 タケジ程度ならどうにもでなる可能性がある。

 そう思えば40日などどうというものでもない。



(だいたい二ヶ月くらいか)

 それくらいでレベルが上がるのならばありがたい。

 ただ、毎日出かけられるかどうかは分からないが。

 家の用事というか、親に呼ばれたりする事もある。

 そうなると、実際にはもっと時間がかかるだろう。

(ま、それくらいなら)

 寝床と飯を提供してもらってるのだから我が儘は言えなかった。



 懸念通り、そうそう簡単にモンスター退治には出かけられなかった。

 周りの目があったりするので、外に出るのが難しい。

 そして、家の用事につれていかれる事もある。

 親戚や近隣貴族との会合などのついでに同伴させられ、顔合わせなどをしていく。

 貴族同士の付き合いとしてやむをえないが、面倒でしかなかった。



 移動手段が馬車くらいなので、どうしても時間がかかる。

 ちょっと隣村や町に行くだけで片道一日や二日はかかってしまう。

 会合の用件次第では逗留になるのも珍しくはない。

 その為、一度出かけると数日は帰ってこれなくなる。

 モンスター退治に出かけたいトモルにとって、この時間の浪費が一番痛いものになった。



 面倒なのはそれだけではない。

 出向けばそこの子供達と顔合わせにもなる。

 これがまた手間だった。

 相手が年齢相応の子供なら良い。

 なのだが、中には子供の頃から悪い意味で貴族的な者もいる。



 無駄に気位が高い……ではなく尊大な態度をとる者もいる。

 何を勘違いしてるのか、やたらと偉そうな態度をとる者は多い。

 他にも、悪さを窘められた事がないのか、我が儘と横暴を振るってくるような者もいる。

 さすがに手を出されればはね飛ばす事にもなる。

 だが、そうなると今度は家同士の関係が入ってくる。

 家というか貴族としての序列次第では、手を出されたとしてもそれをはねのける方が悪いとされる事もある。



 トモルの場合、往々にしてそれで不利な状況に置かれる事が多い。

 何せ男爵というのは貴族の中ではもっとも低い階層である。

 しかもそれが地方の、更に片隅にある辺境の領主となればなおさらだ。

 単純な序列としては本当に最下級になってしまう。

 そんな家の子供が、序列が上の家の子供をはねのけたらどうなるか。

 悪いのははねのけた下位の家の者になってしまう。

 事の経緯よりも、家の地位がものをいう。



 ただ、ある意味幸いなのは、トモルの家が本当に辺境の土地に位置していた事だった。

 そのあたりに領地を持ってる貴族は、例外なくモンスターとの最前線を担っている。

 その為、貴族としての地位だけでは計れない価値を持ってもいた。

 こういった辺境の領主を蔑ろにすれば、国の外縁部に穴をあける事になる。

 そうなれば、モンスターの襲撃を国内にまで押し通される事もある。



 一般的にこういった家は、実際の地位とは別に一段二段高く評価される。

 男爵であっても、その上の子爵とほぼ同格。

 場合によっては更に上の伯爵並に見られる事もある。

 だからと言って貴族としての地位が上がるわけではないが。

 それでも、迂闊に手を出せない立場にあった。



 それがあるからこそ、トモルが頭を下げるだけで済ませられてるとも言えた。

 もっともトモルはそういった事に全く頓着しない。



「悪いのはそっちだろ!」

 相手の親が出てきてもはっきりそう言った。

 おかげで父親は顔を青くする事も一度や二度ではない。

 だが、相手の親も子供同士の争いで家の付き合いを悪くしようとまでは思わない。



「まあ、子供同士の事だから」とお茶を濁しておしまいにする。

 どちらが謝罪するというような事態にもせず、問題をうやむやにさせて終わりにしていった。

 多少のしこりにはなるかもしれないが、具体的に何がどう悪くなるという事もないし、したりもしない。

 そうやって親同士は折り合いをつけていった。



 もっとも、トモルのそうした態度は貴族としては最悪ではある。

 言い分は分かるが、どうしたものかと父が途方に暮れる事は一度や二度ではなかった。



 ただ、こういった外出が今後増えていくとは言われている。

 面倒がこれも貴族の仕事なのだろうとトモルも理解はした。

 多少は顔を合わせておかないと将来に響く。

 それは何となく分かっているので、トモルも父の外出には付き合う事もやむなしと納得する事にした。

 それに、こうした子供同士の顔合わせもある程度将来を見込んでの事である。



 男同士なら将来の人脈に。

 女だったら、将来の結婚相手を。

 子供の頃にある程度接点をつくり、そうした将来に備えなければならない。

 貴族同士となると接触の機会が少ないのでこういった措置も必要になる。

 これが貴族がひしめく首都や地方都市ならともかく、辺境だとこういった措置をしないといけない。



 貴族の結婚は基本的には貴族同士である。

 トモルの家程度なら庄屋との婚姻もあるが、それとて庄屋が最下限になる。

 庶民との結婚は、よほどの事がない限りありえない。

 あったとしても、成功した商会やある程度以上の工房の経営者などになる。

 一定以上の勢力の持ち主が基準だ。

 あるいは、見目麗しくて見初められたという場合などであろうか。



 そういった例外はあるが、基本的に貴族以外との婚姻は難しい。

 その為、幼少の頃から顔を見合わせくらいはしておかないと、というのが地方貴族の習慣になっていた。



(そんな事で時間をとらせんなよ)

 トモルとしてはそう言いたくて仕方が無かった。

 貴族とは名ばかり、実態は庄屋とたいして違わない家の生まれとしてはそう思ってしまう。

 何せ貴族との接点より、近所の集落の者達との方が顔なじみだ。

(嫁をとるにしても、こういうところからでいいだろ)

 家の格を考えればその方が妥当に思えた。



 それほど柊家はたいした家ではないのだ。

 有力貴族の傍系でもないし、近隣の中でも有力者というわけではない。

 それこそ、格の上がった庄屋というのがふさわしいくらいの家である。

 隣近所から適当な嫁をもらった方がマシなのではと思えるような家だった。

 下手に貴族と接点を持つよりは、そっちの方がふさわしい。

 それが柊家である。



(その方が村に根を張れるだろうに)

 他所の貴族との伝手を作っておかねばならないのかもしれない。

 しかし、まずは足下を固めてからであろう。

 そうやって集落を取り込んでいく事で、領地を安定させていく。

 そうした方がいいとは思うのだが。



(まあ、そこは父さんと母さんのがんばり次第か)

 婚姻政策もまずは子供がいないと話にならない。

 そこはまだまだ若い父と母に頑張ってもらわねばならない。

 何人もいれば、あちこちの貴族との婚姻も可能になる可能性が高い。

 それはそれでどうなのかと思うが、トモルとしてはその為にも両親に頑張ってもらいたいものだった。



 でなければ、自分の時間が減ってしまう。

 気がかりはそこだった。

(まあ、弟か妹が出来たから、そこは大丈夫なのかな)

 現在母は臨月間近である。

 その子供がちゃんと生まれて育ってくれる事を願ってやまない。

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