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1回目 どうやら転生したらしい


(これは……!)

 唐突に悟る。

(よもや、転生か?!)

 柊トモル(3歳)は己を顧みてそう思った。

 なお、彼が特別自意識過剰だとか、頭がぶっ飛んでるというわけではない……はずである。

 自分の持ってる記憶を振り返り、そう思っただけである。



(ひでえもんだ)

 その前世は決して楽しいものではない。

 ご多分にもれず、悲惨なものだ。

 リストラでニートな廃人な日々を過ごした日々。

 そんな記憶が頭に浮かんでくる。



 親が生きてる間は実家で過ごしていたが。

 死後は、遺産相続での家を分け与えられた。

 他の兄弟の最後の情けである。

 その他の遺産も、全額ではないが多少の金銭を渡された。



 その代わりに親類縁者の縁故を切られた。

 もともと接点は完全に無くなっていたので問題はない。

 名目が実態に追いついただけだ。



 そして遺産を食いつぶしたあたりで、当然ながら死亡確定。

 奇跡が起きることもなく、そのまま死亡していった。

 はっきり言えばろくでなし以外の何者でもない。

 他の誰かに危害を加えてないのが唯一の救い。

 それでも、生産性など全く無い人生であった。



 まあ、リストラ以前はもう少しマシであったかのだが。

 勤続三ヶ月で叩き出されるような人間だったので、能力は推して知るべし。

 それ以前に人間性の面も言及されていた。

 そういった事情を考えると、弁護のしようがない。



 かくて、駄目に駄目を重ねるような人生を重ねた。

 そんな人生にふさわしい末路である。

 それでも下天のうちの50年も生きた。

 それだけは立派だったのかもしれない。



 そして今である。

 どういうわけだかそんな記憶が頭に浮かんできた。

 齢3歳ながらも50年分の人生経験を持つ子供となってしまっている。

 そこにどんな意味があるのかはわからないが、とにかくそういう状態になっている。



(いや、単に他人の記憶を持ってるだけかもしれないし……)

 一応そうも思うが、だとしても疑問は残る。

 何でこんなどうしようもないオッサンの人生なのかと。

 どうせ記憶を抱えるなら、もっとましな人のものが良かった。



 そのオッサンがトモルとして生まれ変わったのか?

 トモルにその記憶だけが与えられたのか?

 どちらであっても不可解きわまりない。



(別に神様とかあの世の記憶があるわけでもないし)

 こういう場合の定番として、神との邂逅があるのではないかとも思う。

 前世らしきものにおいて流行っていた……らしい……異世界やら転生やらのお話を思い出す。

 そういった話の定番では、神様のお情けで異世界に転生するという事になっていた。

 たいていの場合、死ぬ必要がなかった者がうっかり死んでしまった事への補填として。

 その際、何かしらの特殊能力を持って生まれるのが常であった。



 なのだが。

 今のところそういったものは感じられない。



(まあ、所詮は作り話だしな)

 身も蓋もない事を考えながら、それでも現状に照らし合わせていく。

(とりあえずチートはないっぽいな)

 とんでもなく便利なご都合主義である、一般的な人間より優れた能力。

 それらしいものは感じられない。



(能力値とかを確認出来れば、とかは思うけど)

 さすがにそれも無いか、と思った。

 しかし、これくらいの用意はちゃんとあったようだ。

 目の前に半透明の画面が表示される。

 そこには、ゲームのようなステータス・状態確認画面が表示されている。






<< 状態確認 >>



柊 トモル


3歳 男


レベル1


体力: 30/100


健康: 30/100


敏捷: 30/100


智慧: 30/100


意志: 30/100


共感: 30/100




一般教養 レベル9


知識:日本 レベル8


運動 レベル4


パソコン操作 レベル15


基本魔術 レベル1



振り分け可能技能点数: 0点




<< 状態確認 >>





 いきなりあらわれた画面に、

「なんじゃこりゃ?」

と思った。

 それでも、目の前のものが自分の能力であるらしい事を理解していく。



 ただ、数値の意味が分からない。

 数値は読めるし、項目の意味もある程度把握は出来る。

 だが、その数値がどのくらいの程度なのかが分からない。

 比較対象がないからだ。



 一般的な人ならどれくらいなのか?

 これが分からないから、今の自分がどの程度なのか把握出来ない。

 ただ、年齢の事もあるので、それほど大きなものではないだろうとは思う。

 これで成人並みの能力だったらおそろしい事になる。



(まあ、このあたりはおいおい検証していくか)

 いろいろと確かめて確認していくしかない。



 幸いにして、生まれてきたのは地方領主の家庭。

 決して裕福ではないが、一般家庭に比べれば良い生活をしてる。

 この条件の中で可能な限り色々やっていこうと思った。

 そう思って周囲の状況などを見聞きしたり、手近な者から色々聞き出していく。

 詳細は分からないまでも現状を掴むためだ、

 そうすると、色々な事が判明していった。



 まず、地方領主という地位であるが。

 聞こえはいいが、実質は国境の小さな集落をまとめてるだけである。

 庄屋や豪農よりは良いが、それらの少し上というあたりでしかない。

 それに国境(というより辺境)なだけあって問題がある。

 モンスターの出没地域に隣接してるのだ。



 なので、農業は常にその被害を受けている。

 領民の被害も当然ながら発生している。

 それらからの防衛のために、兵士は多めに配備せねばならない。

 その備えのせいで、慢性的に財政は圧迫されている。



 解消手段として、モンスターを倒す事で得られる核という器官を売りさばいてはいる。

 それでも不足しがちな財政を補うには至ってない。

 どうにか領地運営はしているが、実態は火の車である。

 中央からの支援もあるにはあるが、状況を解決するほどのものではない。

 ジリ貧であるというのは変わりない。



 それでも何とかやってるだけ、父親の経営運営能力は悪くはないのだろうが。

 このままではいずれ滅亡するのは目に見えている。



(とはいってもなあ)

 現状でどうにかできるわけでもない。

 何せまだ3歳である。

 これで何かがどうにかできるというなら本物の天才でありチートであろう。



 しかし、能力値を見る限りでも、実際に外で動き回ってもそれらしい兆候は見られない。

 他の子供達と同程度の運動能力しかない。

 本を読んだりするくらいの智慧はある。

 さりとて状況を覆すような名案が浮かんでくるわけでもない。



 日本にいた頃の智慧や知識を用いる事が出来れば良いのだが。

 リストラされてニートになるような人間の持ってる知識では何の役にも立たない。

 つまるところ詰んでるのである。



(どうしたもんかな)

 どうしようもない。

 とにかく今できるようなことは何も無かった。




もし良かったら、「いいね」を押していってくれると嬉しい


評価点とかは、最終回まで読んでから考えてもらえればいいので

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