「原色」「入道雲」「老い」
久しぶりの投稿です。
どうぞ。
他の何色も混ざることのない純血に沈んだ。
一般的に綺麗の中の汚点はどうしても目立つ。
だがしかし、ここでは違う。
どんな汚点でも純血の前では霞んでしまうのだ。
それは純血が桁外れた綺麗さ故に汚点など些細な物でしかないと思っているから。
きっとそうに違いない。
そうである以外に何があるというのだ。
僕を中心に回っている世界。
こんな清潔な世界は僕だけのもの。
真実を知らない僕は優越感に溺れた。
他の何色も寄せ付けることのない空に溶けた。
一般的に空とは色鮮やかなものなのだろう。
だがしかし、ここでは違う。
雲は見下すものであり、夕焼けで橙色に染まることはないし、夜が訪れ闇に飲み込まれるなんてこともない。
それは空に溶けたから、空と共にしているから。
きっとそうに違いない。
そうである以外に何があるというのだ。
僕を中心に回っている世界。
こんな自由気ままな世界は僕だけのもの。
空の上を知らない僕は孤高の存在だと舞い上がった。
他の何色も辿り着くことのできない森に隠れた。
一般的に森などといった集合体は小さいものの集まりだ。
だがしかし、ここでは違う。
森は大きな一つのものなのだ。
それは森に隠れているから分かるのかもしれない、外から見ても分からない中にいる者だけの特権。
きっとそうに違いない。
そうである以外に何があるというのだ。
僕を中心に回っている世界。
こんな素晴らしい世界は僕だけのもの。
結局のところ、何も知らない僕は無邪気に笑った。
色々な場所へ行った。
何も知らないことを知った。
何故血が赤いのかも知らなければ、どうして僕の体を通うのかも知らない。
何故空が青いのかも知らなければ、どこからが空なのかも知らない。
何故森が緑なのかも知らなければ、どこからが森なのかも知らない。
指を噛んで、滲み出た血を眺める。
綺麗だ。
この綺麗さをいつまで保つことができるのだろうか。
僕のことすら僕は知らない。
空を見上げる。
綺麗だ。
ただ、坊主頭の化物雲が邪魔くさい。
何も遮ることのない孤高の空が見たいのに。
この雲はどこから来たのだろうか。
そもそもどこで生まれたのだろうか。
そしてこれからどこに行くのだろうか。
どこで尽きるのだろうか。
僕以外のことなどなおさら僕が知るわけがない。
森を見渡す。
綺麗だ。
風に吹かれて揺れる一体感が好きだ。
けれど、この森はいつ出来上がったのだろうか。
あぁ、溢れる疑問に答えることができないのは何故だろうか。
それすらも分からない。
僕の知識が足りないからだろうか。
僕がまだ若いからだろうか。
年を重ねればどうにかなるのだろうか。
もう、何も分からない。
空に浮かぶあの雲のように僕もどこかへ流れてしまいたい。
何も知らずとも生きていける世界で、ゆっくりゆっくりと過ごしていたい。
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