展望は見えない
朝帰ったら、まだ役人がたくさんいた。
証拠物件の押収として、捕らえられた連中の荷物を運び出している。
一人あたりに与えられた空間はそう広くないので、置いてある荷物も微々たるものと思っていたが、あの部屋にどれだけ運び込んだと突っ込みを入れたくなる量を運び出していた。
そして食費の会計を始めた。
約十人が出て行った。
やっと名前を顔が一致するようになってきたかなと思われる時だったのだが。
「また、やらかしてくださいましたねえ」
柴源が、どこか疲れたような顔で現れた。
「やらかしたは僕じゃない気がしますが」
「まあ、はっちゃけてくださいましたねえ、あの方達」
そう苦笑交じりに呟きながら、それでもため息が出るのを隠さない。
「前途、なかなか困難ですねえ」
「それは僕のことですか」
「いいえ、私のことですよ」
「?」
ちょっと王を玉座から引きずり降ろそうという陰謀の主犯をやらかして、命が惜しければ王の寵姫の弟を守れと命じられたなんてなかなか言えることではない。
そのうえ、王の寵姫の弟はなかなか思い切りのいい性格で、少しはためらえという間もなくやらかす少年だった。
まあ、寵姫は寵姫で相当な性格なので、王も苦労しているようだが、そういう女を選んだのはそっちだ。
「まあ、これから何事もなければいいんですが」
出なければ何のためにこんな王都から離れた場所に連れてこられたというのだ。
「そうですね、とりあえず、膿は出たと思いますが」
「そうあってほしいですねえ」
自分の部屋から出ると、圭樹が箒を持って出てきた。その部屋は元々圭樹の部屋ではないのに。
「どうしたの」
「とりあえず、掃除だな、何もないから箒だけかけといた」
圭樹はそう言って、箒を片付けに行く。
「真影、何があったか聞かないが、今度何かあったら相談ぐらいしてくれ、巻き込むとか考えるなよ、むしろ、やらかしてから知ったほうが心臓に悪いから、ぜひ事前に教えてくれ」
「あ、そうなの?」
「やらかしたことは、否定しないのな」
圭樹は実に人を読む事に長けている。
この先、どちらの道に進むにしろ、それは武器なるんだろうなと思う。
そして自分の武器は何だろうと真影はふと思う。
自分のことは案外とわからない。
「そういえば、玉君辞めるらしいぞ」
「え、秀黎もか?」
「いや、秀黎は辞めないが、玉君は辞めるとさ、上司に相談のうえ、来月からいなくなる」
「辞めて、どうすんの?」
「上級試験に合格したんなら民間でもそれなりのところに雇ってもらえる可能性はある。まあ、官吏やってんのか怖くなったんだとさ」
「こういうことは、めったにあることじゃないのにな」
「そうかなあ、結構英断かもと思うぜ」
圭樹は意味ありげに笑う。
多分、これからばれるところにはばれて、それなりの身の処し方を覚えないといけないんだろうと真影は思う。
圭樹は何かあると思っているだけだろう。具体的な何かはわかっていない、今はと限定されているが。
辞めて逃げる道もない。
「まあなるようにしかならないよな」
真影は自分に言い聞かせるようにつぶやく。
天暁は今頃どんな天気だろうと真影はそっと思った。




