騒乱の始まり
襲撃の日取り、その相手は一人で道を歩いている。
どうももともと公にできない恋人がいるらしい。その相手に会いにひっそりと忍んでいく。
そういう習慣を逆手に取られたのだろうと真影は思った。
基本、高位貴族や王族は一夫多妻制なので、公にできない恋人というのがどういう存在なのか真影にはわからないが。とにかくひっそりとまるで襲ってくれと言っていい習慣だ。
そういうことを調べぬくそのあたりは称賛してもいい。その努力をほかに回せと言いたくなるが。
あるいはそういう習慣を持っているから標的にされたのか。
真影はただ時を待っていた。
仕事が重なり、庁舎に泊まり込む。
簡単な寝台が置いてあるそこで、真影は闇に潜み騒ぎが起こるのを耳を澄まして待ち構えていた。
ああ、そろそろこの茶番劇も終わりか。
斎宗園、彼は今日に限って、一人で行動していない。
迎撃態勢を整えたうえで、恋人とやらのところでは無く敵を誘うためにそぞろ歩くのだ。
真影がその場にいることはない。
真影は年齢の問題で夜間の単独行動を許されていない。
本日は真影がいないため夕食は少々手抜き気味だった。
それでもまあそれなりのものを食べることができたので、何事もなく炊事班は後片付けに追われていた。
洗った皿をふいて戸棚に片づけていた金武はいきなり押し寄せてきた武装した一団に目をむいた。
押し寄せてきたその一団はまず炊事場に飛び込んできたのだ。
「な、何ですか」
とりあえず、用件を聞く。金武本人にはそのような心当たりはなかった。
胴当てを身にまとい、剣を佩いたその相手は金武の顔を覗き込んで無言で顔をそらす。
ガチャガチャとけたたましい音がした。
片付けていた調理器具を取り落としたやつがいる。
「何慌ててるんだお前」
振り返ったとき、それは慌てて逃亡を図っていた。
「おい、深々」
玉君が、床に落ちた鍋を開いながら呼びかける。
武装した一団は心身を取り押さえた。
「何があったんですか」
手早く拘束していく手際を見て、これは軍人だと察した金武は問いかけた。
しかし金武を無視して彼らは深々を連行した。
そして別動隊がさらに奥に進む。
悲鳴が聞こえた。
厨房の騒音と騒ぎに何事かと戸惑っていたがどたどたと階段を駆け上がる音に圭樹は思わず自分の部屋からそっと様子を除いた。
「なんなんだよ、一体」
圭樹が見たのは隣の部屋に押し入り、中にいた同僚を引きずり出す。
引き立てられていく相手をわけもわからず見送っていく。
恐る恐るといった具合に漢途が自分の部屋から出てきた。
「何があったと思う?」
自分の部屋から顔だけをのぞかせて、圭樹が訪ねた。
「わからないけど、つれていかれた連中の顔に心当たりがある」
「心当たり?」
「ぎりぎりで命拾いした連中の身内だってことさ」
漢途は苦く呟く。




