たくらみ事
「お前、なんかあった?」
金武が唐突に聞いてきた。
「いや、別に?」
なぜそんなことを言い出したのかわからず、真影は首をかしげる。
「いや、ちょっと、玉君に聞かれて」
「なんで?」
それは本気でわからないので真影は思わず真顔になる。
「いや、それはな、深々がお前にその」
「何を言いたいのかな」
言いよどむ金武を逆に問い詰める。
「なんかびくついているっていうんだ、お前何か知らないか?」
「びくついているねえ」
小心者にもほどがあるとあきれたが、真影は笑ってごまかした。下手に話すといろいろとこじれる可能性がある。
金武は少々単細胞な性格だ。
「まあ、あとで話すよ」
そう言って真影はその場を立ち去る。
「あいつ、なんかやらかすな」
真影は実は結構過激な性格をしていると薄々察している金武は呟く。
「とりあえず、本人はそれほど重く感じてないんだからほっとけば」
こっそり見ていた圭樹と漢途が言った。
感づかれていないと思っていたのは真影だけだったようだ。
真影は一人の官吏の監視を命じられた。
その官吏は経理の職務のかなり上の役職についているらしい。
上等な衣服をまとい、ほっそりと細身で端正な顔立ちの中年男性だった。
その官吏を殺して公金横領の濡れ衣を着せるという計画を立てているらしい。
陳腐な計画だと思う。
深々と交代でその官吏を監視する。
そして経理部に共犯者はもちろんいた。
その共犯者が、監視できるよう仕事を融通してくれるそうだ。
その相手も公金横領の共犯なのかそれとも脅されて仲間にされたのかはわからない。
真影も聞く気はない。
しばらくは命じられたとおり、監視を続けていた。そして大体の相手の行動パターンを読み取ったと判断した後、行動に移ることにした。
相手が通ると思われる場所にそっと紙片を落としておいた。
そこに小さく警告とだけ記しておく。
それを拾うか拾わないかは賭けだが、いざとなったら拾うまで続ければいいと思っていた。
幸先よく一回目で拾ってくれた。
さてどうとるか。
相手の表情は全く動かない。
真影は目を細めて、相手の様子を監視する。
一度拾えば相手もいろいろ考えるはずだ。次の文面はどうしようか。
真影はいきなり全部書くのも自分が危険だし、とどれだけ情報を小出しするか思考をめぐらせる。
そして紙片を懐に入れて立ち去る相手をそっと見送った。




