役割分担
荷物を置くだけ置いて、食堂に使うと思しい広い部屋に全員集合した。
「それでは皆さん、これから、割り当てのことを相談しますがなにか意見はありますか」
最年長の李柴源がまとめ役を買って出た。
二十歳未満の少年たちに交じっていると、引率の教師のようだ。
「あの、食事の支度なんですが、経験者と未経験者に分けたほうがいいと思います」
そう言いだしたのは圭樹だった。
多分、彼は己を知っている。だからこその発言なんだろう。
「そうですね、では、調理経験者は手を挙げて」
真影と金武が手を挙げた。そしてほかの三人が。
基本的に同じ学問所で集まっていたので、名前と顔が微妙に一致しない。
「五人ですか、なんとか回るか?」
口調も疑問形だ。
「大丈夫、いけます」
元飲食店勤務の姉を持つ真影が断言した。
「食費は一度買い出しに行って決めます、残りは掃除の順番を決めてください」
「自室は各自、公共の場所の掃除は交代、それと、食事の手伝いも交代で一人ずつ。そんなところでどうでしょう」
その提案に真影は頷いた。まったくわからない人間も、一人ぐらいなら何とかなるだろう。
「じゃあ、各自お金を徴収してください、これから買い物に行ってきます、その間に掃除当番を決めておいてください」
結局真影と柴源が仕切る形となった。
予算は見習いの段階で受け取った報酬だった。
このあたりくらいかというところを受け取り、真影は教えてもらった道を進む。
先頭は金武次に真影で後ろの三人は珍秀黎、木玉君、胡深々と名乗った。
そこそこ金のある商店だが、物凄くではなく、そのため家事をいろいろやらされていたと言われた。
三人一緒にいたのは以前の学問所ではいつも三人かたまっていたからだという。
どやら貴族と平民で差をつけるところだったらしい。
三人とも平凡さでは圭樹といい勝負というところか。
「そういえば、金武料理できたの?」
「そりゃ、下士官は雑用専門だから、炊事に限ってはやらされた」
洗濯はやってなかったのにという突っ込みは言わないでおく。まあ洗濯より、食事のほうが命に直結している。
そしていきなり困った。
「道、わかりずらい」
王都天暁では碁盤の目のように道がつけられている。しかしこの街では道がいろんな角度でつけられ分かりにくい。
そのうえ、妙な建物も角度が妙だ。
「国境近くの州は大体道に創意工夫をしてあるんだよ」
金武がこともなげに言う。
「国境近くならいつ戦場になるかもしれないから、そのことを想定して作ってあるもんだ。道が分かりずらいとか当たり前」
「じゃあ、天暁は」
「天暁が戦場になるときは首が滅ぶときだろう」
その言葉に真影は笑えなかった。
数年前、その一歩手前に行っていたから。
五人はそのまま市場のある場所を迷いながら進んだ。
市場につくといきなり困った。
「見慣れた野菜がない…」
どう調理するのか見当もつかない野菜が吊るされていた。




