表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/153

転機待ち

 実は美蘭は縄抜けの素養があった。どうしてそんな特技があるのかと問われれば国が乱れていたからだとしか言いようがない。

 そのうえ素人が適当にくくっただけなので、そんな素養がなくても適当に暴れればほどけたのではないかと思われる。

 縄をほどいて、適当に体に巻き付ける。

 縛られているように偽装した状態で誰か来るのを待つ。

 後宮の立ち入り禁止区域に近い場所のようだ。

 髪は少し生乾きのような状態になっている。その乾き具合で今までの時間を計る。

 それほど経っていないなと判断し、誰もいないのを確認してから固まってしまった身体を伸ばす。

「たぶん何にも考えてないんでしょうねえ」

 やれやれとため息をつく。

 確実に誰かに唆されたんだろうが、もっと確実にあの連中は捨て石にされている。

 王に復讐って、そのあとどうやって生きていくつもりだ。ああ、最初から生きるのをあきらめているのか。

 普通王を暗殺しようとすれば成功不成功問わず、三族皆殺しと決まっている。

 親兄弟は当然として祖父母や伯父叔母従兄位まで連座して殺されるのだ。

 親類縁者が多かった場合大量虐殺になってしまう。

 それから考えれば唆したのは親族ではないだろう。

「このまま逃げられるかな」

 もともと運動神経はいい。さっきは油断したが、最初から敵と認識すれば勝てない相手ではない。

「さっきあきらめてくれればよかったのに」

 美蘭は呟く。

 さっきの段階であきらめてくれれば、無罪とは言わなくても命だけは助かったかもしれない。

 最終的に生涯幽閉かもしれないが。死ぬよりましなんじゃないかと思う。


「あれ?」

 勿忘草の部屋で菫が少し困っていた。

 どこに行っても勿忘草が見つからないのだ。

 いつもいる広間や玉蘭の部屋にもいなかった。

「どこに行ったんだろう」

 菫と違って勿忘草は後宮から出ることを許されていない、だから絶対後宮にいるはずなのに。

 廊下をばたばたと走る音がした。

「どうしました」

 本来の部屋の主でない菫が出てきたのに女官はいぶかしげな顔をしたが慌てて指導してくれた。

「すべての妃型は自分の部屋に戻り再び連絡が来るまで待機してください」

「は、何かあったのですか」

「それにこたえる義務はありません」

「わかりました、それと勿忘草さんを見ませんでしたか?どこにもいないんですが」

「それは女官長に連絡しておきます」

 それだけ言うと再び廊下を走っていった。

 女官が廊下を走るということは普通ない。よほどのことがあったとみていいだろう。

「女官長に話をしてみるか」

 いざという時は女官長に協力を頼めと王の許可ももらっている。

 懐に隠し持っていた王の手紙を手に、菫は女官長のもとに赴いた。

 女官長は菫の顔を見て苦々し気ににらみつけた。

 おかしいなまだ手紙を見せていないのに。そう思ったが女官長は菫に別の手紙を渡した。

 『王の真実の寵姫である、勿忘草の妃を拉致した、王には今後我々の言う条件を飲んでもらう』そう書かかれていた。

「何、これ?」

 目が点になるというのはこういうことを言うのだろうか。

「調査は、貴女にお任せせよと、王からのお達しです」

 何やってるんだあいつは。

 思わずここにいない勿忘草を罵った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ