犯行状況
「桂花はどうしてるんだろうな」
玉蘭の部屋でお茶をするのもなんとなく習慣になってしまった。
千客万来、美蘭の仕事も順調で毎日誰かしら注文にやってくる。
「わからないけど、聞き出したくても口が堅くて」
普段三人でつるんでいるので、一人がいなくなるとなんとなく調子が狂う。
「そういえば、後宮にいる連中だが、できるだけ思い出してみたんだが」
玉蘭は軽く首を回しながら呟く。
「なに?」
「いや、もしかしたら知らないほうがいいのかな」
そう言って玉蘭は話題を変える。
「たぶん、お前にはつまらない話だ」
多分なら話してほしい、もしかしたらこの膠着した状況を変える手掛かりになるかもしれないのだから。
「そういえば、結局誰が桂花をあんな目に合わせたんだろうねえ」
一番怪しいのは玉蘭だが、それなら、桂花の居場所を教えるようなまねはしない気がする。
「楽器を借りに来たのは私だけではないからなあ」
玉蘭はほかに琴を持ち出した石竹ともすれ違っていたという。
「そういえば、睡蓮と百合はどうしてるかな」
最近あの二人に動きがない。むろんもめごとが起きないのはいいことなのだが。
「そうだな、鶏頭がすっかり引きこもってしまったし、それで椿と薔薇も動かなくなってしまった」
後宮でもめている集団を思い出すが、それは手掛かりにならない。
桂花は人畜無害枠にいたので、存在すら気づかれていなかった可能性すらある。
「なんで桂花が襲われなきゃならなかったの?」
桂花自身に襲われるような意味などひっくり返しても出てこない、ならば桂花じゃなくてもあの場所にいれば襲われるようなことがあったのかもしれない。
「もしかして、何かを見た?」
「何かって何を?」
「見られちゃまずいものとか」
玉蘭が首をひねる。
「そうだな、見られてはまずいものといえば、不義密通。後持ち込み禁止のものを持っているところを見られたか、それとも、何やら陰謀の話し合いを聞かれたか」
「陰謀って」
「王の暗殺計画とか、歴史上で実際にあったことではある」
妃として入った女が王の暗殺を手引きしたという事件が昔あったらしい。
「でもさ、そんなことを聞いてしまったら、確実に殺すんじゃない?」
頭を打たれた状態で桂花は一人で倒れていた。
もしその場で犯人がいたならまだわかる。止めを刺す前に美蘭が来てしまったのだ。しかし見られては困ること、言いふらされては困ることを知られたなら、死んでもらうのが一番確実だ。
「血を見た途端ビビって逃げたとか?」
何それ情けない。と一瞬思ったが、案外それが一番ありそうだ。
しかし、王にどうこうしようとか陰謀を張り巡らしている割にそういうことで挫折するあたり、犯人は女官ではないような気がする。
後宮女官とは危険もありのな職業だろうと思う。そんなところに努めている女に根性がないわけがない。
王を同行は想像だが、他のことでも、王を害することになるのは変わらない。
「そうすると、犯人は妃の中の誰か?」
「確かに、それが一番ありそうだが」
「じゃ、誰だろう?」
美蘭は注文表を懐から出した。
注文を受ける際に感じた印象などを裏側に小さく記してある。
それを指でたどった。




