王による余波
一応発見した義務がある?と思った美蘭は鶏頭と桂花のお見舞いに行った。
桂花は意識がまだ戻っていないということで鶏頭の枕元にだけ行ってみた。
寝台は小さかった。看護する法に合わせてあるのだろう。自室にあるあの広大な寝台では頭を冷やす布を取り換えるのも一苦労だろうから。
鶏頭はだいぶ意識がはっきりしているようだった。
「大丈夫ですか?」
とりあえず声をかけてみた。
「来たのはあんただけよ」
鶏頭は吐き捨てるように言った。
「椿も薔薇も顔も見せやしない。どのみちあいつらに期待なんかしてなかったけどね」
それでも悔しいのか唇をかみしめている。
「どうせ、どうせ…」
言葉は途中で嗚咽に途切れる。
「大丈夫ですか」
今度は多少意味が違うかもしれない。
「王の寵愛なんて嘘なのよ王は私なんて相手にしていない、私に一服盛って別の部屋に行ってるのよ、私は別の誰かの盾なんだから」
だらだらと冷や汗が美蘭の背中を流れた。
何が大丈夫だろうだ、しっかりばれているだろう。
心中で王を罵倒しつつ、これから何と言っていいのか考える。
「ずっと思ってるのよ、今はうらやんでいるけど、本当のことを知られたら笑いものにされるって。いったい誰なの、私を利用して」
延々と続く恨み言に美蘭は後ずさる。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
それだけを心中で呟きながらじりじりと扉の向こうに進んでいく。
「安心してください、私話しませんから、絶対に話しませんから」
やっとそれだけを言うと、美蘭はその場から逃げ出した。
ああ、心臓に悪かった。美蘭はため息をつくと桂花の部屋も覗いた。
桂花は頭に白い布を巻いたまま眠っているように見えた。
そのまま自室に戻ると、招かれざる客が寝台に座っていた。
「ようこそおいでくださいました陛下、ですが私のところよりもまず行かねばならない場所があるのではないでしょうか」
恭しく一礼してから王に対してそう言ってみた。
「まったく今日は散々だったな」
「陛下より散々な目に合ったものはたくさんおります、これしきの事でそのようなことをおっしゃらないでくださいませ」
「お前、なんか怒ってないか?」
「私が陛下に対して怒りを覚えるなんてそんな不遜なことはありませんことよ」
にっこりと笑って見せたが、目が笑っていないことは自覚していた。
「鶏頭殿ですが、そろそろ事態に気が付いておられるようですわ」
先ほどの鶏頭の話をしてみたが王は気のない顔でそれを聞き流した。
「ならあの女もそろそろ潮時か、王に捨てられた女なら妬まれることもないだろう」
そのいい加減な口調に額のあたりにひくつくものを感じたが意志の力でそれを押しとどめる。
「今日は下げ渡す予定の奴らに品定めをさせるつもりだったのだが」
鶏頭と桂花のせいでその予定がつぶれてしまったと王は愚痴る。
「鶏頭殿の心配はしないのですか」
「そんなものは興味ないな」
「鶏頭殿がああなるとわかっていたのでは」
「そりゃそうだな」
感情的になるなと必死に自分に言い聞かせようとするが、王の顔を見ればイラつきが止まらなくなる。
「そもそも王ってのはそういう役割だ」
王は手を伸ばして膝をついていた美蘭の髪を一房つかんで引き寄せる。
「例えば、商業活性化の策を出したとしよう、その結果、八割ほどの商店が活性化し、二割はそのままつぶれた。何かをすれば栄える者もあり、滅びる者もある。王はそれをすべて呑み込むのが仕事さ、何かやって、その結果誰かがつぶれようと一一気にするのも飽きた」
美蘭の顔を上げさせて、その眼を覗き込む。
「王とは、必要悪でもあるのさ」
美蘭は決して目をそらすことなくそういう王の顔を凝視していた。
触覚ヘアみたいになっている感じで創造してください。




