内職
美蘭は新しく別の道具を用意してもらった。
木製の丸い輪を木の足で支えたそれは組紐を作る道具だ。それを持って女たちが出入りする広間で作業をしていた。
青、白、黒の絹糸を交互に組んでいき紐に模様を作る。
「あんた、そういうもの自分で作れるからいいわねえ」
桂花がそばに寄って見ている。ほかの女達も珍しそうに遠巻きにして見ていた。
糸束を交互に動かしながら美蘭は呟く。
「これくらい簡単だから、言えば教えてあげるのに」
美蘭はそう言って糸束を動かす順番を説明しようとしていると桂花はそれを押しとどめた。
「いいのいいの、後でもらうから」
「あのね、言っておくけど、これは私用だからね、ほしいなら適当な糸をそっちで用意してね」
「ああ、それくらいなら安いからねえ、そういえば知ってる? 百合が予算ぎりぎりで簪なんか要求したらしいわよ」
「そういうの、あるんだ」
「そのうちあんたにも言ってくるかもね、ほら前にもらった肩掛け、あんたが作ったって言ったから、それにあんたは帰るっていうくらいだから王には何の興味もないんでしょう」
「まあね」
向こうから妙な興味を持たれたけど。と言えば百合に殺されかねないなと思いつつ手は規則的に動く。
これはいい手かもしれない、暇つぶしに作った刺繍や手芸品を適当にばらまくことで情報を集められるかもしれない。
「注文製作しようかな」
「あ、それはどういうの?」
「最近一人で作るのも飽きてきたから、誰でも希望のものがあれば作る、経費は多少もらうけどね」
「いや、こんなところで商売始めようって、どれだけ金に困ってたの」
桂花が軽く引いて見せた。
「弟がね、上の学校に進みたいって、教科書とか安くないし、親は博打で稼ぎのほとんどを使っちゃうし、お金はいくらあっても困らないし、どうすればお金が儲かるか考えるのはもう習い性なの」
「まあ、まともな家庭環境な連中がここに集まってないのはわかってたけど」
「というか、桂花はなんか詳しすぎない?」
前々から疑問に思っていたことを聞く。後宮の壁の隠し扉なんか知らないのが当たり前だ。
「そりゃね、元後宮にいた人に聞いたのよ、追い出された側室ってやつにね」
桂花は思いもよらない話をし始めた。そして美蘭は可能性に気付く。
桂花は元々随分いい家に生まれたのではないかと。
「ああ、まああたしにもいろいろあったのよ、詳しくは話せないけど」
そこを詳しくと追いすがりたいが、怪しまれても何だと自らを押しとどめた。
「とりあえず、ご注文は? 勿忘草の青を入れたものだけど、そっちは黄色を入れる?」
「黄色と赤と白、組み方は種類があるの?」
「ああ、これは一番簡単な奴だよ、適当な紙で説明するから、明日ね」
注文表かこれはいい手かもしれない、これなら持ち歩いても誰もおかしいと思わない。
美蘭は自分の考えにホクホクと笑った。




