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花の名前

 翌朝、扉が開けられ、昨日が夢のようにいつもと変わらない日が始まった。

 とにかく自分がいなかった時の様子を聞こうと桂花を探した。

 途中女官長に反省したのかと問いただされた。どうやら機能の外出禁止派閥を与えたつもりだったらしい。

 美蘭は適当に言葉を濁したが、それを見て女官長は勝手に反省したと判断したらしかった。

 本気でここの連中とはノリが違う。

 そう思いながら、桂花のそばまで行く。

 最初は舞の授業だった。

 美蘭は舞などやったこともなかったが、もともと運動神経は鈍いほうではなく基礎体力と筋力もあるほうなので、それなりにこなせる。

 手本となる舞を経験者らしい、睡蓮という女が舞った。

 睡蓮は最初に美蘭が風呂で話した相手だ。妓館送りになるところだと言っていたが、舞は相当の技量があるようだ。

 指先まで綺麗に型にはまっている。

「次に鶏頭」

 そう、教官が言ったとき一気に空気が凍った。

「何?」

 一昨日まではこんなことがなかったので、美蘭は少し混乱した。

「ああ、あんた知らなかったんだね、あの後、あの娘が王の相手をしたのよ」

 王の相手と聞いて美蘭は首をかしげた。

「あ、結局やったんだ、でもどうしてこうなるの?」

「そりゃなるよ、自分たちと比べて、鶏頭のほうがいいって言われたようなもんじゃない」

 つまり一歩先に行かれたと思われているわけだ。

「それじゃ百合あたりは」

 百合は鶏頭の一挙一動を厳しい目で見ている。

「うわ、殺気立ってる」

「そこ私語をしない」

 担当教官に注意を受けて美蘭と桂花は黙った。

 美蘭は舞の初心者なので、通しで舞うことはあまりない、所作と少しの動きをつけられるぐらいだ。

 舞いながらできるだけ名前を顔を一致させることをやってみる。

 まず鶏頭、豊かな髪と全体的にぽってりとした肉感的な女だ。年齢もたぶん最年長だろう。確実に美蘭と真逆な女だ。

 そして睡蓮、華奢な、背の高い女だ。顔立ちはややきつめ。特に口をきかないので性格はわからない。

 百合は中肉中背で背丈はほぼ真ん中、顔立ちはやや甘めだが、結構きつい性格をしているのを美蘭は知っている。

 桂花は全員の中で一番目立たないだろう。目立つ特徴がないのだ、集められた女は全員それなりに目鼻立ちは整っている。桂花は整っているがそれが没個性になってしまう質の顔立ちだった。

 後は話したことはないが、槐という女の顔を今日初めて覚えた。

 ひっそりとして目立たない印象だと思う。

 桜、福寿草、菫、薔薇、杏、石竹、葵、椿という女達がいたが、それは名前と顔が一致しない。

 何かに書き付けておくかと思うが、部屋には授業中必ず掃除が入る。また風呂には全裸で入るので身に着けておくのも難しそうだ。

 さてどうするかと今後を悩んだ。

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