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忍び出る

 側室部屋は外側から鍵がかかる使用だった。

 さらに窓は内開きで、窓を開けたとしても、鉄格子がはまっている。

 火事が起きたら死ねというのかという作りだ。

 簡単に食べられる食料と水だけ置いて後は放置という状態だ。

 授業も受ける必要はないとずっと誰とも会っていない。

 おそらく食料が食べられつくしたころ追加を持ってくるんだろうと思う。

 美蘭は寝台に腰かけて、ぼんやりとしていた。

 今は食事をする気にもなれない。

 風呂はわざわざ行かなければならないが、便所は各部屋についている。

「どうしよう」

 呟いてみる。

 暇つぶし用に用意してもらった裁縫道具は鍵のかかる戸棚の中に入ったまま出してもらえなかった。

 何もすることがない。物心ついた時から一度も経験したことのない事態に美蘭は混乱していた。

 いきなり壁が空いた。

 正確には壁に偽装してあった扉がだ、入ってきたのは意外な人物だった。

「何しに来たんです、陛下」

 王は適当な石を置いて、扉が閉まり切らないようにしていた。

 そういえば桂花が中からは開けられないと言っていたなと思いだす。

「おいでとは存じませんでした」

「ああ、お忍びで、この扉の出入り口は庭側にあるから、廊下には通じてないぞ」

 王は悪戯っぽく笑う。

「それで何の御用で?」

「とりあえず聞きたいことがある、お前、帰る家があるのか?」

「あります」

 美蘭ははっきりと答えた。

「それはおかしい、海宰相はここに集められた女たちは寄る辺ない身だといった」

「そんなこと言われてもですね、母こそ物心つくかつかないかでなくなりましたが、下級官吏の父と登用試験目指して勉強中の弟がおりますし」

「おかしいな?」

 王は首をかしげる、それでも気を取り直したように扉の向こうに置いてあったらしい荷物を取り出した。

「お前、家に帰りたいか?」

「私が気になるのは弟だけです、弟のもとに帰りたい」

 王はさらに怪訝そうな顔になる。

「父は博打にはまって、稼ぎのほとんどを空費してしまうので、私が稼いで弟を養っているんです、もし私の稼ぎがほんの少しでも少なくなれば、私はその娼婦に売られていたでしょう。そうなったら弟はどうなるか、それが心配で、だからなんとか弟と二人で生活を何とかできるならと思ったんです。弟は登用試験を受けるので、下級とはいえ官吏の父は必要な気もして捨てるのもと思うんですが」

 ポリポリと人差し指で王は自分の頬をひっかいていた。

 なんとなく何かを納得したような顔をしていたが美蘭にはわからない。

「まあ、なんとなくわかったような気はする。それでその荷物を開けてみろ」

 言われて包みを開けるとそこに入っていたのは下級女官の着物だった。

「着替えろ」

 美蘭は適当な物陰を探すが、そんなものはどこにもない。

 大き目の寝台の影に座り込んで着替えた。

 着替えてよく見れば王も以前とは違う少しだけ質素な服装に着替えている。

「夕方までこの部屋には誰も来ない、それにほかの女たちは授業に出ている」

 そう言われて、美蘭は王について外に出た。

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