幕間
李柴源は王の前で平伏している。
王は柴源を視界に入れていない。顔を全く別方向に向けている。
「とりあえず、顔合わせは住んでいるようだな」
どうやら王にとってもあの少年のことは少々気まずいらしい。
「なかなか面白い少年だと思われますが」
柴源は猫のように笑う。
「それはいい、お前の役割はわかっているはずだ」
「命の危険だけは回避、それ以外はできるだけ自由に、ですね」
王はどこか居心地が悪そうだ。
「事情を最初から話すか、それとも黙っているかはそっちで決めろ、私が求めているのは最低限のことだけだ」
「かしこまりました。しかし、今の状態ならかなりこちらの事情を分かっているわけですし、黙っていても疑うでしょうね」
「そうだな、あの子は馬鹿じゃない」
それなりに真影に親しみは感じているらしい。
「お役目必ずや果たして見せます」
「そうだな、その最低限すら守れないなら、お前を生かしておく意味もないな」
「王のご厚情には常に感謝しておりますとも」
薄く笑う。
「期限は五年だ。それまで勤めろ」
それだけ言うと、王は李柴源に退出を促した。
結局最後まで目を合わせることはなかった。
自室に戻ると先程までのことが嘘のようだった。
「大丈夫だったのか?」
漢途がいぶかしげに聞く。
先ほどまで傷一つなかったはずの真影の頬が赤く腫れあがっている。
「何でもない」
そう言ってうつむく。その様子が何でもないという言葉を裏切っていた。
「ちょっと絡まれたのか、お前可愛いし」
「可愛い、言うな」
思いっきりひっぱたかれた、こんなことは幼い頃を除いてなかった。
幼い頃は家庭も大変で姉もいっぱいいっぱいだったのだろうと想像はつくが。
今も追い詰められているんだろうか。そうだったとしてもおかしくない。姉の今いる状況はあまりに過酷だ。
「悪い、疲れたから寝る」
さっさと寝台にもぐりこんで周囲の視線を避ける。
「俺もつかれているけど、なんか目がさえて」
金武が投げやりに呟く。興奮状態がまだ続いているんだろう。
そういえば元々は洗濯をするだけだったのに、思わないことになってしまった。
「全部夢だったらいいのに」
真影はそんなことを呟きながら目を閉じた。




