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王宮にて

 王都天曉は東の海に面した土地にある。

 港を抱え込むような形に街があり、その街の向こうに王宮があった。

 別名を藍青宮と呼ばれる。その王宮は白く塗られた壁にここでしか使用を許されていない瑠璃瓦のコントラストが美しい。

 その奥の奥にこの国の国王が住んでいる。

 かつて、先先代の国王は幾人もの美しい妃を侍らせ、多くの王子を得た。

 王が崩御したのち、後を継いだ王都、その弟たちは玉座を巡って激しく争った。兄は玉座にしがみつき弟たちは兄を玉座から引きずり降ろさんと陰謀をめぐらし、そうした駆け引きの中政治はないがしろにされ、国は徐々に荒れ果てていった。

 王と、王弟たちの妃もその争いに拍車をかけた。妃を輩出した貴族や逓信たちもまた争いに参加し、王宮は泥沼化した。

 国はあれ、王都天曉すらまともに歩けるような場所ではなくなった。

 わずか数年ほど前の話だ。

 最終的に先代の王と、王弟達がほとんど討ち死にした後、さしたる後ろ盾を持たない末弟にあたる王子が即位した。

 それが今の国王だ。

 王都を離れ地方で暮らしていたため難を逃れた。しかし、皮肉なことに、どの兄たちよりも彼は有能だった。

 そして、王権は彼が即位したとき、空前絶後の権威を得た。

 専横の時代の荒廃を逆手に取り、自らの権威をこれ以上なく高めた。

 最強の独裁者として君臨したのだ。

 第二十五代国王獅明。歴史に残る強王の時代が今だ。


「試験にかかわった不正者の名簿はこちらに」

 側近から渡された、名簿を獅明は受け取るとぱらぱらとめくった。

「見覚えのある名前だな」

「同じところに不正を頼んだ連中は固まる傾向があったようです」

 側近は王宮に来る前から獅明に仕えているものばかりで構成されている。

「まあ、いい、ちょっとは脅かしになっただろう」

「しかし、本年度の新入りが全く使えないことになりますが」

 試験にかかわる不正を一掃した結果、合格者が激減し、お試し受験の少年たちまで合格させて、数をそろえる有様になった。

「それならそれでいい、少年たちの、今は使えなくともこれからみっちりと鍛えればいい、それに最低限合格点は取っているのだろう」

「はい、こちらが名簿です」

 再びパラパラとめくり始める。

「この十七歳未満の者は、一度地方に送ったほうがいいな、研修が終わり次第、寧州長官に預けることにしよう、期日までに寧州長官を呼び出すように」

 寧州とは獅明が少年時代、天暁を離れ、即位する直前までを過ごした土地だ。

「まあ、研修期間中は特に彼らに注意するように」

「かしこまりました、陛下」

 深々と頭を下げる側近を横目で見ながら、獅明は新たな仕事に目を向ける。

 兄たちの不始末のつけはまだ払いきっていない。

 払い終えるまで、どれほどかかることかと、獅明はため息をついた。


 研修のための宿舎についた真影はざっと部屋の中を見渡した。

 左右の壁に二つずつ小さな寝台があり、寝台の脇にこれまた小さな机がある。

 同じ学院の仲間は、受験番号が近かったため、同室になっている。

「四人部屋か」

 圭樹がうわあとため息をついた。

 真影以外の三人はいいところのお坊ちゃんだ。この狭苦しい部屋は苦痛だろう。

 真影の部屋もこれよりは広いが、それでもつくりは古いあの家よりきれいなので差し引きはゼロだ。

 寝台の下についている引き出しだけが収納だが、真影以外の仲間は持ってきた荷物の入れ場所に苦労しているらしい。

「食事は食堂で食べるんだろう、着替えと筆記用具以外何がいるんだ?」

 心底疑問に思って真影が利くが彼らには彼らの理由があるのだろう。

四苦八苦して、寝台だけでなく机の下にまで荷物を詰め終わって、ようやく人心地ついた。

「まあ、よかったな真影、俺たちと一緒で、変に知らないおじさんと一緒なら襲われてたかもしれないぞ」

 真影の少女じみた童顔をからかって金武が笑う。

 冗談にならないくらい、真影の様子は男装の少女じみている。

「シャレになってないよ」

 漢途がしみじみという。

 真影とこの三人は同年齢にすら見えない。

「ほっといてくれる」

 容姿をからかわれるのは嫌いなのだが、この三人はよくこのことをネタにする。

 とにかく研修前日。明日からは正式な官吏登用を目指すことになる。


小説情報にあった男の娘は主人公でした。引っ張ってごめんね。

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