先行き不明
強制的に女装させられた真影と圭樹が連れ立っていた。
金武と漢途の二人は人質として、留められているようだ。
二人の顔色は青い。
「さっさとあの二人を開放しますか」
とにかく今は真影と圭樹の二人に周囲の視線が言っている。開放するなら今だ。
李柴源はそっと背後に忍び寄る。素知らぬ顔で、縄をつかみ引っ張っていく。
連行すると見せかけて、二人をそっと連れ出す。
いつまでも監禁場所に連れて行こうともせず、徐々に全く別の場所に連れていかれようとすることに気付いたのか。
「あの」
金武がそう口を開こうとするのをそっと口を押えて止める。
しげしげと顔を見てようやく李柴源の顔に気付いたのか、目を瞬かせて混乱している。
「しゃべるな」
それだけ言うと、すでに包囲網が終わりつつある警備兵に引き渡す。
その包囲網を見て金武は顔をひきつらせた。おそらく、状況を悟ったのだろう。
「さて、さすがにあの格好で保護されるのもかわいそうですねえ」
そんなことを呟いて人の悪い顔をしてみせる。
「まあ、似合ってましたが」
はっきり言って、上等な女物の着物というものは着心地が悪い。
裾はずるずると長いので足にまとわりつくし、きっちりと占めた幅広の帯は息苦しい。そのうえ、つま先の細い靴が小指を締め付けて今は痛いを通り越して痛覚が麻痺してきたところだ。
というか、この格好で武術の達人である王を暗殺しろとか馬鹿じゃねえかとやさぐれた。
真影はそれなりに年ごろの少年らしく小競り合い程度の喧嘩なら経験したが、正式に武術を習ったこともない。
「圭樹、震えてるのか」
「いや、なんかお前見てるとこの状況にもかかわらず笑えて」
たっぷりと布を使った重い袖でなければ後ろ頭に一発入れているところだ。
「どこがおかしい」
小声でのやり取りなので周囲には聞こえていないと思いながら訊ねる。
「全然おかしくないところがかえって笑える」
真影の肩が怒りで小刻みに震えた。
さすがに相手も馬鹿ではない、そこまでが付くが、最終的に暗殺する人間はほかにいる。そのあたりに潜んでいるはずだ。
どんな腕のいい暗殺者か知らないけど、なんであんな連中に雇われたんだろう。
真剣に疑問に思った。いくらなんでも命には代えられないと思うのだが。
吾亦紅の妃のあの言動をあっさり受け入れた時点であの連中の頭は絶対どうかしている。
足が止まると、不意に地面に何かが刺さった。
それは小さな針のように細い短剣で。
「もしかして無駄口たたいてるって怒ってるの」
圭樹の唇が震えた。
足を進めるが、足元が危ういので遅々としか進めない。
「どういう段取りになっているんだろう」
圭樹が呟く。
こんなところで真影を使う予定はなかったはずだ。作戦変更の知らせとか言っているんだろうか。こんなことを自分たちが心配するのがまあわからない。
どうなるんだろうと別の意味で先行きが心配になった。




