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妃達

 妃達は一つ部屋に集められ、それぞれ二人女官を付き添わせていた。

 広い部屋にそれぞれ離れるように座っている。

 菫の妃は周囲には無関心なようで、先ほどから打ち合わせと違うことが次々に起きていることも気にせずお茶を飲んでいる。

 雛罌粟の妃は小さくため息をついた。

 もうすぐ自分は後宮を去る。実際下級貴族の娘だった自分が後宮に入れられたのはただの箔付け、王の石で適当に嫁がせられるだけだと最初から分かっていた。

 他の妃のことは知らない。

 吾亦紅の妃は随分と芍薬の妃をうらやんでいるようだが。雛罌粟はそれも理解できない。

 何しろ多い時には月に十数人の刺客が捕らえられている現状だ。王の寵愛は毒と裏表、それを承知でただ一人の上級妃の地位に納まっているのは尊敬できるかもしれないと思う。

 吾亦紅の妃はいらだたしそうに神から垂れさがる鎖をいじっている。

 銀の鎖を。

「様子を見てくるわ」

「吾亦紅殿、それは女官の仕事ですよ」

 雛罌粟の妃がそう言ってもそのまま吾亦紅の妃は聞き入れずそのまま女官たちを引き連れて出ていった。

 そして数刻、ただお茶を飲んでいただけの菫の妃が口を開く。

「吾亦紅さん、遅くないかしら」

 そして衛兵と女官たちが部屋に押し掛け、後宮に戻り沙汰を待てと王の命を伝えてきた時も吾亦紅の妃は戻ってきていなかった。

 そのまま自室に軟禁のような状態にされる。

 さらに大きなざわめきが聞こえ、芍薬の妃も後宮に戻されたらしいと雛罌粟の妃は悟るが、吾亦紅の妃が戻ってきたらしい気配はなかった。

「もしかして大変なことになっているのでは」

 さすがに血の気が引いた。

 吾亦紅の妃の行動を王がどう問題視するか。そしてそれをうっかり黙認してしまった自分の立場は。

 へなへなと床に崩れ落ちる。

 女官たちが寄ってきて、雛罌粟の妃を座らせる。

「おそらく、連座はないでしょう」

 年かさの女官がそう言った。

「なぜ、わかるの」

「もともとあの方は…」

 それ以上は言わなかったが、薄々事情は察せられた。

 早く後宮を出たい。

 雛罌粟の妃はわが身を抱きしめながらそう祈った。


 吾亦紅の妃はあえて誰もいない裏道を通っていた。

 裏道は身分の低い物専用の道だ。そのため王宮の中とは思えないほどみすぼらしい。

 赤く塗られた唇をひん曲げて、足を進める。

 本来なら、自分は芙蓉ぐらいの身分を与えられていいはずだ。

 あの芍薬より自分のどこが劣るというのだ。

 それだけが吾亦紅の妃を動かす推進力になっていた。

 手はず通り、迎えが来た。

 そう、すべては手はず通りに進んでいる。そして自分を吾亦紅などに貶めた王も思い知らせてやれる。

 今真重に吾亦紅の妃は銀の鎖とそれを結び付けられた歩揺を引き抜き投げ捨てた。

 憎々しげにそれを踏みにじる。

「そのようなことを」

 慌てて、無化に来たものは歩揺を拾い上げる。

「構わないでしょう、今日で全部終わるんだから」

 吾亦紅の妃はそう言い放ち先に進んでいく。

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