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回避不可

 宴の場は一瞬だけ混乱した。

 その一瞬の混乱は王の一喝で静まった。

 おずおずと芍薬の妃の命で来たと一応王の直轄の部下がやってきた。

 そして恐る恐るという風に芍薬の妃が、念のためにと王宮内に運送を行った商人を一か所に集めて、拘束しておくようにと命じたこと、そして、その商人たちに会いに行ったことなどを述べ立てた。

 とたんに王の眉がひそめられる。

「なぜ止めない」

「お妃さまのご命令に逆らえるものなどおりませぬ」

 大臣クラスなら別だが、官僚レベルに妃のそれも王の寵愛を独占する上級妃の行動を制限できる人間などいない。

 王は周囲を見回して舌打ちをする。

「芍薬はすぐに連れ戻して部屋に入れておけ、警備兵につかせ一歩も出すな。菫、雛罌粟、吾亦紅も同じく、後宮の己の部屋で待機させておけ」

 それだけを命じると宴の客に向かった。

「全員ここから動かないでいただこう。今は王宮内も混乱している。うかつに出歩けばかえって危険だ」

 そう言ってから自らの椅子に座りなおす。

「報告を」

 ひれ伏す官吏たちを見下ろしながらそういう。

「すでに火は消し止められ…」

 ひれ伏した姿勢で報告が続く。


「なんかすごい音がしたな」

「だから絶対おかしいって」

 漢途がそう言い張る。

 真影は濡れた手をふきながらそれを聞き流していた。

「じゃ、部屋に戻って寝ようか」

 金武が言った。

 洗濯しなければならないものはまだ残っている。部屋の異臭問題は解決したわけではない、しかし、それなりの解決を見たと思っている彼の足取りは軽い。

「あれ、なんで人がいるんだ?」

 すでに薄暗くなっている。宴があるとしても真影達のような下っ端は何の関係もない。

 なのにバタバタと走り回る人影がある。

「なんか殺気立ってないか?」

 金武が周囲に視線を送る。

「あれ?」

 薄暗いのでよくは見えないが、妙に立派な服装をした壮年の男性が立っていた。

 基本的にここに努めているのは官服姿だ。私服になるのは大臣以上の身分だけだ。

 仕立ての良い錦織の衣装。

「なんで大臣がこんなところにいるんだ?」

 圭樹が不思議そうに言う。

 取り囲んだ男達が四人を見る。

「見られたか」

 大臣と思われる相手がそう呟く。

 男達が四人に向かってきた。不穏なものを感じた四人は慌てて踵を返す。

「こっちにもいる」

 わけがわからないなりにどうも危ないことに巻き込まれたことには気が付いた。

 真影はフルフルと首を振ったが多勢に無勢になりそうだ。

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