遠い宴
お茶会が終わると真影達は元の仕事に戻らされた。
先日見た後宮と同じ王宮の中とは思えない殺風景な仕事部屋で、日々清書の繰り返しだ。
「また、いろいろと催し物があるらしいぞ」
金武がそう言うが、どうせ真影はそれに関係がない。
最近いろいろと資材が運び込まれているらしいが、そんなことも真影は興味がない。
むしろこの催し物のせいで、仕事を覚えるのが遅れるのが困ると思っていた。
「そういえば、真影は元々計算のほうがうまかったんじゃないのか」
金武が言う。
貧乏暮らしで、金のことにはうるさい。とにかく何でも計算してしまう癖がついてしまい、結果として磨かれた計算能力は学問所でも誰の追随を許さなかった。
「そういえばそうだな、お前配置換え頼めば?」
圭樹も後押しした。
「今はまだ、だよ、それに、仕事を覚えさせるんなら、そのうちそれもやってみろと言われるんじゃないか?」
真影はそう言って筆を走らせた。
全員時はそれなりに綺麗なほうなので、清書に文句は来ていない。
「それより、次の休みこそ、洗濯をしろ」
真影はそう言って半眼になる。
「そろそろ、異臭騒ぎが起きそうなんだよ」
ため込んだ洗濯物の臭いにはそろそろ全員辟易している。解決策は洗濯だけだと全員わかってはいるのだ。
「やったことないし」
漢途がそう言って目をそらす。
「みんなやってることだから、というか少しずつやってけばそう大変なことじゃないんだけど」
真影は遠い目をしてそう言った。
最初にやれと言われた時に素直にやっていればよかったんだ。
基本こまめに洗濯している真影の周囲は臭いが薄い。
しかしもともと狭い部屋だ。さらに三対一となれば異臭の被害を真影も受けねばならない。
一方的な被害者である真影の追及は厳しい。
「腕がもげても洗濯しろ」
さっきを込めてそういうと、全員こくこくと頷いた。
善は急げと、夕飯が終わり、少量の洗濯物を持って、主に下着だが、洗濯場に向かった。
とにかく簡単にでも洗濯の手順を教えておきたい。
洗濯場は今は閑散としている。
まず、水場で汲んできた水で、洗濯物を浸す。
そして、灰をたっぷりと水に混ぜる。
さすがに王宮。燃やすものに事欠かないのだろう。灰はうずたかく積まれていた。
「おい、灰なんか入れたらますます汚れるだろう」
「灰を入れたほうが汚れが落ちるんだ」
灰をしっかりと洗濯物に絡ませて、見本としてモミ洗いをやってみる。
他の三人もそれをまねして盥の中で洗濯物をもみ始めた。
すでに薄暗い時間帯ではあるが、とてつもなく明るい場所がある。
何やら儀式が始まっているらしい。
煌々と明かりがともり、微かに楽の音が聞こえてきた。




