空を見上げて
「あの馬鹿どもは、どうして自分たちの立つべき土台をかじり倒そうとするのだろうな」
王はそんなことを呟いた。
しばらくは芍薬の間に入ることを禁じられていた。
流産防止のためだ。当分の間芍薬殿は絶対安静を義務付けられている。
「とにかく、妃を送り込んでこようとする奴らが一番質が悪い。妃の名前でお目こぼし、馬鹿かと思った」
先代の王の妃の外戚たちの横暴が、特にひどかった。
国庫の穴の空き具合といったら今思い出してもぞっとする。
「どうしてそれだけやって、国がつぶれないと思えたのか本気で不思議だ」
傍らでは、即位以来ずっと彼を支えてきた側近たちがうんうんと頷いている。
別に彼は強権を振り回す王になりたかったわけではない。なるしかなかったのだ。
「それで、あの連中はどうなった」
拝家と劉家、二つの古来からの名家は居間、上級妃の親族という身分を得た。しかし両家は相当な不仲。
今は美蘭と真影の奪い合いに終始しているらしい。
双方つぶしあってくれればいいのだが。
それに勝ったとしても、あの二人の姉弟が、そちらの言いなりになると思っているのなら相当頭の中が膿んでいる。
「それにしても、合格者双方全滅ね」
不正入試のあっせんの取り締まりに引っかかった以外に、そもそも全員合格範囲の点数を取っていない。
本当に国を思うなら、官吏として推薦する子弟をきっちりと教育すべきではないだろうか。
考えれば考えるほど、乾いた笑いしか湧いてこない。
「本当に厄介だ」
後宮に送り込んだ娘の名前で好き勝手やることしか考えていない連中の相手はうんざりだ。
「しかし、未来に希望を持っているようですが」
現在美蘭のお腹の子供が生まれて即位することになったとしても最低二十年は先の話だ。その時点では池の当主も劉家の当主もこの世のものではないだろう。その未来にどう希望を持つというのだ。
「そろそろ真影は出ていくときだな」
「すでに船に乗り込んだという話ですが」
真影は、船の上で風を受けていた。
初めて一人で船に乗った。以前の旅で大体の順路や手順は覚えているが、今度は自分一人でこなさなければならない。
船の上を行きかう船乗りたちの様子を見詰める。
これからまた、一人でできるようにならなければならない。誰かに頼るのではなく、誰かに頼られるようなそんな存在。
今の自分はちっぽけで頼りない。広い海を見ていれば自分の小ささに驚くほど。それでも前に向かう。
自分の人生思った以上に山あり谷ありになったけれど、とりあえずは負けない。
真影は拳を握ってみた。
華奢な手だ。それでも姉は大きくなったと言ってくれた。
多分次に会う時は入れ替わりなんて無理だね。
ちっぽけでもそれなりに育ってみせる。揺れる船底で風に髪をなぶらせながら、真影は天を見る。




