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望む力

「さて、これからどうしよう」

 呆然とした顔をしているだろうというのが後ろ姿からでもわかるほど、乱れた足元で去っていく祖父を見送りながら真影は呟く。

「まあ、寧州にそろそろ戻れるように手はずを整えておくが」

 寧州には、真影の素性は完全に隠されるように手配されている。

「それはそうと、姉さん、大丈夫」

 椅子に座っている姉は、化粧抜きで普段より青白い。

「まあ、大丈夫よ、理由が分かって少し安心したところもあるから」

 美蘭はそう言って、儚く笑う。

「まあ、これから大変だし、また体力つけないと」

 そう言って、自分の身体を自分で抱きしめるように腕を回す。

 自らの芯にいるものを感じ取ろうとするかのごとく。

「あの」

 今姉の中にいる命は、単に姉の子供というだけではなく。現国王の第一子になる子供なのだ。いずれ王位を継ぐかどうかは知らないが、それでもその母としての重圧は一気に姉にかかることは間違いない。

「姉さん、僕にできることなら、何でもするから」

「ありがとう、その気持ちだけで十分よ、今は」

 美蘭はそう言って真影の頭を撫でた。

「とりあえず、今は自分の力をつけることを考えろ」

 不意に王が真影の額を指ではじいた。

「今できることは、それくらいだ、お前を頼るのは、十分な力をつけてからだ」

 厳しい言葉であったが、真影もそれは納得した。

「芍薬殿、しばしお休みを」

 美蘭に付き従っていた女官が現れ、美蘭に肩を貸す。

「大切な御身です、当分はできる限り安静に」

 悪阻が収まるまで、寝て過ごすことになるらしい。


 姉と王を見送った後、真影も、とりあえず、寧州に戻れる時まで実家で寝泊まりすることにした。

 王宮での内部は最近覚えたので、案内を頼む必要はない。

「やれやれ」

 厳しいことを言われた、真影の人生を厳しくしてくれた方からの有り難いお言葉だ。

 それでも、力がほしいと思う。あの方ほどではなくとも、真影の人生を切り開くためと姉の力になるために。

 途中で、拝家のおそらく従兄だったんじゃないかなと思われる知った顔を見つけた。

「お前」

 目をすがめ、真影に挑むようない顔をする。

「僕は別に嘘をついたわけじゃないですよ」

 真影はにっこりと笑う。

「僕がどんな嘘をついたと?」

 どうせあの局面で本当のことを言っても信じないだろうと本当のことを言っただけだ。

「お前の父親の人事が発表された」

 さて、どういう判断をしてくれたのか。真影はそれが気になった。

「そうですか」

 きちんと説明した。そのうえでの決断はどういうものだろう。

「お前、やっぱりあの男の息子だな」

 今日一番ぐさりとする言葉を言われた。


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