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笑う

 ご飯がまずい。美蘭は食事を一口食べて呆然とした。

 美蘭は貧乏育ちだ。そのうえ数年前は国がつぶれるという騒ぎになりどん底を味わった。

 首都のある天暁は人口の割に耕作地面積が少なく、国が荒れれば真っ先に飢えるやばい土地だった。

 内乱が起こり、他州からの食料供給が途絶え、食材の値段が高騰し、挙句は道端の草まで食べたものだった。

 それで食中毒で亡くなった人も見た。

 ついでにその草の一部は今野菜として栽培されている。

 そのため、口に入るものは何でもおいしく食べられるようになってしまったのだ。

 数年ぶりに食事が憂鬱な気になった。

 やっぱり気が滅入っているせいだろうか。

 喉が詰まって口に食べ物が入っていかない。

 傍らの給仕している女官が怪訝そうな顔をして美蘭を見ている。

「ごめん、下げて」

 かつての自分なら、自分の首を締め上げているだろう。十分に食べられる食材を残すなど、万死に値すると。

 しかし食べられないのだから仕方がない。

「しばらくお休みになられますか」

 普段の半分も食べていない美蘭に、女官も不安を覚えたのだろう。

「そうね、少し眩暈もするかも」

 そう言って美蘭は寝室に戻ることにした。

 全部あのバカ親が悪い。

 心中で父親を罵りながら。


 菫は、女官を適当にあしらった。

 上級妃のいる場所への抜け穴の存在を教えたのだ。

 上級妃のいる後宮に入れたとしても自室に鍵がかかっているし、扉以外の侵入経路は屋根の上くらいだ。

 平屋建てなので、王宮の高層階から丸見えになる。

 不法侵入をあくまで拒む設計になっている。

 それに、上級妃用の後宮もかなり広い、芍薬の間にたどり着く前に捕まるだろう。

 とにかく手を出させて、そこを押さえるというのが王の作戦だ。

 しかし思ったより無能なので、こちらから誘導してやらねばならない。

 どの程度手を出させるかはあちらの都合もある。今は道筋に誘導してやるだけ。

 この後宮は抜け道だらけなのだ。前王のせいだが、今は塞いであるが、罠として利用できるなら利用しない手はない。

「本当にありがとうございます」

 とはいえ、たいへんなのはこれからだ。この抜け道を使って、男が通ったという筋書きを描いているはずなのだが、後宮は王以外の男子は禁制だ。

 まあ、芍薬殿の弟が入り込んだが、それは王自身が黙認したので、それに弟とどうにかなるような退廃的な趣味は持っていないようだし。

 それに上級妃は芍薬殿一人、その芍薬殿が不義を行うためには、どれほどの監視を潜り抜けなければならないか。そのあたり本当に頭に入っているのだろうか。

「いいえ、私にも利のあること」

 菫はにっこりと笑う。

「何でもおっしゃって、よほどのことでないなら聞いてあげてよ」

 なんでもといえば、いくら何でも嘘っぽい、これくらいでちょうどいいのだ。


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