怒りを込めて立ち上がる
真影は今まで来たことない王宮の上級官吏専用の休憩所にいた。
食堂を兼ねた下級官吏の休憩所とは材質から違っていた。
そのうえ完全個室、きっちりと壁で遮られ、人目をはばかることもできる。
明らかに下級官吏の制服を着ている真影は悪目立ちしていたが、すっかり図太くなったと思わず自画自賛するほど落ち着いてお茶を飲んでいた。
なんとなく姉のお茶のほうがおいしい気がするが、茶葉がいいのか淹れ方がいいのかはわからない。
あるいはそんな気がするだけなのだろうか。
「ずいぶん落ち着いているな」
真影の従兄だというかなり年上の男。拝謹剛という。やっぱり父親に似ている。父の長兄の息子だという。
父と伯父はだいぶ年が離れているが、いわゆる妾腹、父がギリギリ三番目なのは女児が続いたせいらしい。
いずれ家から出すのに妾までもって子供を作りまくるとは何て言う金の無駄だろうと真影は呆れた。
「お前も、拝家の一員としては胃の名を名乗りたくばこちらの役に立つことも考えろ」
いえ別になりたくありません。
そう言えたらどんなにいいだろうと真影は思った。
真影は河姓のままで別に構わないのだが、相手はそう思っていないようだ。
もし変わるとしたら手続きが面倒そうだなという以外の感想などまったくもっていない。
「役に立つってどういうことです?」
「我が家には年頃の娘が何人かいる、それらを後宮に送り込む」
「それにどう役に立てと?」
そんなことは勝手にやっていろという気分だ。それに、今下級妃として送り込んだとしても王の目に触れる機会すらない。
「むろん、このままでは駄目だ、お前に協力してほしいのは、東大の芍薬殿の排除だ」
真影はそのままお茶を吹いた。
卓に突っ伏してしばらくむせているのをしばらく見守られていた。
「驚くのも無理はない、しかし、芍薬殿がいる以上、他の妃に王が目を向ける可能性は低い、ならば気の毒だがいなくなってもらうしかない」
むせて呼吸困難から揺よく立ち直った真影が軽く息を弾ませながら、尋ねる。
「具体的な計画はできているんですか」
これは絶対に聞いておかなければならない、姉の身の安全を脅かす計画などあってはならない。
真影が同意したと誤解したのか、いろいろと後宮に手をまわしていることを話し始める。
真影はその話の内容をできる限り記憶しようとした。
聞いた内容は端から王に伝えるつもりだ。
どうやら仲介した具体的な名前が出てきた。
しばらくはここにいることにした、なんとしても姉の身を守る。
「命を狙うつもりですか」
ここは重要だ、姉の命を狙うつもりなら、伯父も祖父もついでに父もどうでもいい、どんな手を使っても叩き潰す。
真影の意気込みを完全に誤解した相手はにんまりと笑う。
「そこまでは、考えていない、ただ、不貞の濡れ衣を着てもらうつもりだから、その過程において命がない可能性があるが」
身の内に煮えたぎる怒りを押し隠し、真影は具体的な計画を聞き出すことにした。




