美蘭と後宮
真影は再び拝家の門をくぐる。
実際立派な門構えだ。実家の薄い板で出来たような門とは大違いだ。
迎えに来たという従兄、拝隆栄は、真影を冷たい目で見ている。
呼ばれもしないのに親戚だと言ってた家老としたわけじゃないのに、そっちが勝手に親戚呼ばわりしたくせに、と真影は不満をため込んでいた。
「そう言えば、なんで姉を探したいんですかね」
「お前の姉が独身なら、後宮に押し込むつもりだったらしい」
すでに後宮入りしています。と心中だけで呟く。
「そのことで、母親の責任を取らせたことにして、政界復帰を目指すつもりだったらしい」
そういうことで、いいんだろうか。
「できるんですか?」
義兄は実力主義だという。先々代の不始末ぐらいなら、実力さえあれば復帰は夢ではないと思うのだ。
そして復帰できていないということは実力がないということなんじゃないだろうかと思った。
「私はそんなことより、何らかの実績を出したほうが早いと思った」
思ったより常識のある人のようだ、少し父に似ていたので少々偏見が入っていたようだと真影は反省した。
「むしろ、命拾いをしたのではないかと思っている」
「命拾い?」
「先王の混乱と現王の制裁を免れた」
「あー」
そんな考え方もある。実際、あまりに処刑数が多いので、死刑のやり方を簡素にしたという逸話すらある現王の制裁だ。
それを考えれば、嵐をやり過ごしたと考えることもできるだろう。
それだけ殺さなければどうしようもないくらい政局が混乱していたというわけだが。
「それに、いまさら後宮入りさせたとしても、別の誰かに下賜されるだけだろうしな」
「上級妃まで食い込めないと思いますか」
「上級妃になるにはまず、家柄と寵愛と王子出産のどれかが必要だ、今下級妃にはいっても寵愛と出産はおぼつかないだろう」
今寵愛を独占しているのが芍薬殿、他のどの妃に通っていないのは有名な話だ。
「それに、申し出ても断られる可能性もありますしね」
経費削減に非常に厳しい昨今の王宮、新しい妃を入れればそれだけ予算がかかる。その予算をどこから出すのかといろいろとうるさいのはわかっている。
「陛下、お話が」
そのころ後宮で芍薬殿が、王に進言していた。
「あの、上級妃に新しい方を入れる予定はございますか?」
「いや、ないが、それが何か?」
今まで他の妃の話など興味もないという顔をしていたので、いったいどういう心境の変化があったのかと怪訝そうな顔をした。
「後宮でも、予算を絞ることを考えたのです」
「君は十分節約しているが」
「いいえ、不十分です、先代先々代の浪費を考えますと、もう少し絞るべきでしょう」
真面目そのものの顔でそう言ってきた。
「その場合、新しい上級妃がいらっしゃると、協力してもらえない可能性があるので、新しい方を入れるのは少し待っていただきたいのですが」
「いや、だからそんなことはないと」
「陛下も、私一人という状況はつらいのではないかとも思いまして」
「いや、そんなことないから、そんなことをどうして考えた」
妃の斜め上な発言に王はひたすら困惑していた。




