すさんだ姉弟
真影は寝不足でしょぼしょぼする目をこすりながら食卓に着いた。
遅いから泊まって行けと王宮の客間に泊まったのだ。王宮の客間は拝家の部屋などとは比べ物にならないくらい豪華だった。
絹の布団で眠るなど初めてだったので、というか、貴族や豪商の友人達だって絹の布団など持っていないだろう。
気持ちはいいが、それ故に慣れないのでよく眠れなかったのだ。
歩くのが気後れするような精緻な織物で出来た敷物の上に置かれた食卓には、少々冷めているが、やはり豪華な食事が並んでいる。
王と姉が並んでいるのはやはり違和感を感じるが、二人に対面する格好で食事をする。
朝だというのに、肉に、複数の野菜を巻き込み旨みの強い垂れをかけたものを食べていた。
料理人はいったい何時に起きているのか、それとも徹夜でこの朝食を作っていたのか、悩むところだ。
「拝家と、劉家か」
王が呟く。
「これが、先ほど調べさせておいた、当時の資料だ」
食卓の上に、一巻の巻物が置いてある。
「それはいただいても?」
「構わない、もう我々は目を通した。
寝不足でぼうっとする頭を振りながら、真影は箸をおいて巻物を取った。
「うちの母はそこまで後宮入りがいやだったんですかね」
「いやだったんだろうな、もしかしたら劉家との確執だったのかもしれないが」
「どうしてそう思うんですか?」
「娘が後宮入りを嫌がって、駆け落ちしたとなれば、娘一人を罰するなんてことはない、必ず保護者も連座して処罰される」
「地獄に道連れって気分だったのかもね」
やれやれと姉が呻く。
「でも、そうはならなかったんですよね」
「ああ、結局罰は、二人とも庶人に落とし、そのまま生活するにとどまった」
「温情ですねえ」
「いや、普通はそうじゃないんだ、仮にも貴族だった人間が、庶民に落とされるというのは一思いに殺すよりむごい仕打ちだと貴族や王族は考えているわけだ」
「うちの父に通用しなかったけどね」
どんなことにも楽しみを見つける、それは美徳かもしれないが、それは人に迷惑をかけないでという条件付きだ。
博打に耽溺するのは絶対違うと思われる。
「母としては不本意だったでしょうね」
「というか、お母さんはお父さんを道連れに地獄に行くつもりだったのかな」
その割には子供を二人も作っているが。
「あれなら、ちょっと巻き込んでも良心が痛まないと思ったのかも」
「というより、よくそんな危ない橋渡ったねえ」
「お前ら、父親に対してとんでもない言い分だな」
予備知識はあっても、姉弟の父親に対する冷淡な対応に王が引いている。
「とにかく、できるだけ早く、真影は寧州に還れるようにするから、しばらく動くな」
それから真影の目を覗き込んで念を押す。
「動くなと言ったからな」
「わかりましたが」
「お前には念には念を押したほうがいいと思う」
寧州長官の報告書をかなり重く受け止めているようだ。




