いた場所と行くべき場所
いつかどこかにたどり着く。そう思って生きていた。
生きて生きていきぬいた果てがここか。美蘭は豪奢な部屋を見回す。
「多分あの頃の私は、こういう事態は予測していなかったと思うけれどね」
しばらく庭を眺めていた。
「少し、話してもいいですか、私の子供の頃のことです」
王と妃はそれぞれ椅子に座る。
「子供の頃、占い師に会ったんです、占い師は別の子達にはいい嫁入り先があると答えました、そして、私と六花にはまともに嫁に行く日はないと言われました」
そして瞼を閉じた。
「私は六花の元の顔を忘れてしまいました。覚えているのはあの叩き潰された肉塊」
遠くを見ている眼をしている美蘭を王は黙って見ていた。
「占い師とあってすぐ後に、六花は死にました。そして六花が死んだ意味を考えて、背筋が凍りました」
普段つけている髪飾りはなく、長い髪をくくったままの彼女は普段より幼く頼りなげに見えた。
「あの予言はそういう意味なのだと、嫁入りが決まる前に死ぬからああいうことを言ったんだと、結局生き延びて、私は新たな王が立ち、平和になった街にいて、そうなると死ぬような気がしなくなって、結局それは勘違いに落ち着きました」
そして王を見る、なんとなく初めて見る人のような気がした。
今まで見たことのない表情をしていたからかもしれない。
「占い師にいい嫁入りができると言われた二人は今頃商人と役人の妻になっているでしょうね」
そして、まともな嫁入りの機械などないと言われた自分は王の妃になっている。結局占い師はすべての運勢を当てたのだ。
「私は、地方で育ったので、当時の天暁の様子は知らない、おおざっぱな情報しか耳に入らなかったしな」
「それは仕方がないでしょう」
中央からはぐれた、末の王子、そのために中央のごたごたから無事身を守ることになり、王族の大量死の末玉座に着いた。
「そうですね、私たちは結局、思いもかけない今日を生きているということになりますか」
もう二度と戻るはずのない場所を思い出す。
生まれて十七年ずっと暮らしてきた場所、辛いことも悲しいことも怖かったこともそして幸せな思い出もすべてあった。遠く離れるなど一度も考えたことはなかった。
「そうだな、私も五年ぐらい前なら、玉座にいる自分を想像もしていなかった」
二人は、それぞれの感慨にふける。
「あの男をどうしてほしい?」
「別に、定められた法に従って処分なさいませ」
定められた法では、おそらく処刑される。
「また、思いもかけない場所に行くことになったらどうする」
その謎ときの意味を考え苦笑する。
「その時はその時、私は自分の思うとおりにしましょう、力の及ぶ限りですが」
「答えになってないぞ」
「おや、お供しますと言ってほしかったのですか?」
美蘭は苦笑した。どうやらこの男のほうが、夢想的なことを言っている。
「その時そうしたかったら、そうしますよ」
王が美蘭の顔を覗き込む。
美蘭は王に向けて手を伸ばした。




