檻の中
現行犯で侵入者は捕らえられた。
天井裏から落下してきたのは菫だった。
普段着ている下級妃のそれなりに上等な衣装ではなく、美蘭が見たこともない簡素な衣装を身にまとっていた。
「結局これって何だったの」
武装女官に相手の身柄を渡して、その背中を見送りながら美蘭は菫に聞いた。菫は軽く肩をすくめる。
「見覚えなかったのですか?」
「一度も見たことのない顔だったわ」
美蘭は自分が記憶力のないほうとは思っていない。しかし相手の顔は全くと言っていいほど思い出せなかった。
ちょっと特徴的な眉毛をしていたが、せいぜい目に留まったのはそれくらいだった。
「というか、あんた、私が襲われるまで、待っていたでしょう」
美蘭が白い眼をして相手を睨む。
「いえ、ちょっと落下予定地点に来てもらうまで待ちましたけど」
王の密偵ともあろうものがあれが唯一の倒せる状況であったはずがない。
「後で、じっくり話し合いましょうね」
「そこで王に言いつけると言わないところが貴女のいいところなんですけどねえ」
菫はそんなことを言い出した。
まるで意味が分からない、
そして美蘭は天井を見上げる。
「まさか、天井裏に隠し通路があったの」
「ああ、天井の修理や、改装のためのものですよ、基本的にその用がない時には鍵がちゃんとかかってますよ」
美蘭は疑惑の眼差しを向ける。
「結局あれは何だったの」
「さあ?」
あてにならない言葉に美蘭はため息をついた。
結局すべての謎が解けたのは、僅海栄が戻ってきた後だった。
すでに賊が捕らえられていることを知った彼は王に真影から聞いた話を伝えた。
あまりな話に誰もが関係を疑った。
そこまで逆恨みがあるのかと。
しかし、ある程度年の行った官吏や数名のあの政変を生き延びた大臣などはそれを受け入れる方向に走った。
「生きていれば信じられないことというのはあるものです」
取り調べには律嘉辰も参加することになった。
行きがかり場というわけだ。
栄は隠れ蓑に使われたのではという報告をしたのは彼だ、結局犯人は彼の名指しで捕まったようなものだ。
王宮の地下の昼でもなお暗い中を灯の灯り一つを頼りに歩いていく。




