認識
美蘭の家のほうに調査に向かわせる。
美蘭の家は今父親一人で住んでいる。真影が遠方に配属され、美蘭が嫁ぎ家の面倒を見る人間がいなくなってしまい、家は荒れ放題らしいが、それ以外の問題は起きていない。
そして博打にも誘われなくなっているらしい。
なんでもそこそこ見目好い姉と弟、いざとなったら売らせようと博打に誘っていた連中がいたらしい。
本人たちには話さないほうがいいなと王は思った。
「それで、あれの実家に探りを入れたものは見当たらないのだな」
美蘭に対して人質になるなら弟だろう、父親が人質になったら、どうなるのか想像がつかないが。
「芍薬殿は?」
「しばらく、後宮詰めだ、当分表に出さない」
「それがいいでしょう」
「それと、寧州には知らせますか?」
そばに控えていたものも言い出す。
「それもまだいいだろう。あちらもいろいろと大変なはずだ」
何かしらやらかしてくれた義弟の顔を思い出す。
「しばらくは静観する。しかし警戒は怠るな」
それだけを言うと部下たちを下がらせた。
そして思う、今度のことはどういう意味を持っているのか。
夜、後宮に向かう。
後宮は、延々と長い廊下が続き、開かれることのない扉の前を何度も通る。
そしてようやく、灯りに照らされた扉の前に立つ。
どれほどの女が、素通りする気配に涙したのか知らない。
今は無人のその場所に何やら怨念がこもっているような気がする。
かつて、下級妃のいた場所でのもめごともいい加減うんざりした。
今までの王はよくこんな生活に耐えていたものだと感心する。
そして目的の扉に立つ。
芍薬の花と葉を図案化された扉を開ければ、付き従う侍女が深々と頭を下げる。
そして、もう一度扉を開けると美蘭がが一人、何やら書き物をしていた。
「今日はいらっしゃる日でしたっけ」
怪訝そうな顔で、美蘭は慌てて立ち上がる。
「何を書いていたんだ?」
覗き込むと、そこに書かれていたのは一重咲きの芍薬の画だった。
「刺繍の図案を考えていただけです」
なかなか達者な画を書くものだと少し感心した。
「しばらくは泊まり込む」
「ええと?」
美蘭は怪訝そうな顔をする。
「命を狙われたばかりだろう」
「そんなに深刻な事態ですか?」
すでに一般人からずれまくった認識に少し頭痛を覚える。
「いいから、しばらくは一緒にいよう」
美蘭は小さく笑った。
「気を使わなくてもいいですよ、これくらいのこと慣れれば平気です」
「いや、底は嬉しいといえばいい」
「はい、わかりました。嬉しいです」
ため息をついて美蘭の手をつかむ。
「も、いい」
そのまま寝台まで引っ張っていった。




