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手紙

 定期的に寧州から報告書が届く。

 美蘭は軽く頭痛を覚えた。

 うちの弟はいったい何をやっているんだろう。そんなことを思いながら、受け取った報告書は水没させる。

 それが弟の安全のためだと言い含められていた。

 紙は漉き直して再利用するため燃やさないのだとか。

 こういうところにこの国の財政がまだ立ち直っていないのだと実感させられる。

 そして美蘭は化粧を施され、王宮に向かう。

 定期的に顔つなぎしておくのも妃としての仕事らしい。

 にっこり笑って適当に話を合わせる。背後で巻物に女官が会話の内容などを記しておく。

 高々雑談すらこういう風に記さねばならないのなら、妃というのは楽な商売ではない。

 うかつなことはしゃべるなという示威行動もあるのかもしれないが。

それが終われば後は自由時間だ。

 お茶の淹れ方を練習する。優雅に美しくお茶を淹れるのが貴婦人としてのたしなみというが、それほどお茶の味は変わらない気がする。

 毎日やることに意義があると女官は言い切るが、美蘭には今一つ意味が分からない。

 継続は力なりだろうか。

 最近、自分の部屋から自由に出ることができるようになった。

 むろん後宮の外に出ることは許されていない、後宮の大庭園を眺める程度の自由を保障されているだけだ。

 めっきり暇だなと心中で呟く。

 庭園に降りることは許されない、あくまで、眺めるだけだ。

 床几に腰かけてぼんやりと花を眺める。

 そして空を見上げた。

 空の向こうの弟は、今頃何をしているのだろうと想像してみる。

 いつか、寧州に連れて行ってもらうという約束はしたが、最低でもそれまで二年かかるらしい。

 その二年、弟に会えないと思うと涙が出そうになる。

 ひゅん。

 それは唐突に聞こえてきた風を切る音。

 頬をかすめて風を感じた。

 思わず振り返ると、壁に矢が付き立っていた。

「芍薬殿」

 女官が泡を食って美蘭に駆け寄ってくる。

 そして美蘭は女官たちに取り囲まれて自室に戻らされた。

 恐る恐る振り返り、矢の突き立っている場所を見ればそのやには小さく折りたたまれて紙が結び付けてある。

「あれ」

 なんとか取ろうと戻ろうとするが、女官数人がかりで抑えられて屋内に連れ込まれる。

「そういうことは陛下にお任せくださいまし」

 女官が叫ぶように言った。


 自室に戻ると、急に我に返って床にへたり込む。

「着替える」

 そういえば女官に取り囲まれて着ているものをはがされる。

 手際よく脱がせた着物をたたみながら、楽な部屋着に着替えさせられた。

「あの文、私宛かしら」

 女官が小さく首を振る。

「そういうことは陛下にお任せください」

 気のせいだろうか、なんとなく女官の束縛がきつくなっているようだ。


 ふみは警備担当のものが見聞した。

『殺 美蘭』

 王以外知ってならない妃の本名が記されていた。


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