インストゥルメンタル
現在書いている「ギターと聖霊と彼女と奴らと(仮)」のプロトタイプです。埋もれるのかわいそうだから、せめて出してあげようと思います。
非常に恥ずかしい、どうしようもない作品ですが、個人的には、私が書いたはじめてのオリジナル作品ですので、気に入ってます。
もし、よろしければ読んでください。
ちなみに、表題の意味はFSLNの意味でもありません。
ただの、ちょっとへんな青春ものです(笑)
現実から逃げていたって、夢みたいな世界なんてないし、
現実と理想は、常に相反している方がうまくいく。
だから、みんな夢を見る。理想の世界の中に自分を埋没させて。
でも、追いかけてれば、ひとつくらいいい事だってあるはずだ。
目に見えない力に対する憧れなんて、何者でもない思春期男子なら誰にでもあると思うのは俺の気のせいじゃないだろう。自分のアイデンティティを《未知の強大な力》に重ね合わせることで胸を弾ませるのは、男子なら誰もが経験する道だと思う。
ただ、ある一定の年齢になってもそれを引きずっていると、それを中二病だのなんだのと呼んで、その幼稚性をさげすむ対称にする風潮が世間――特に、精神の老朽化が激しい同年代の女子――にあることを気づかされるのもその年齢だったりする。自分の価値観なんてまだ確立していないただの高校生の俺も、その風潮に倣った視点で自分を冷めた目で見つつも、中二病自体は拒否することもなく受け入れていた。いや、もう、どっぷりだった。
幼い頃からの転校続きで、元々人付き合いの下手な俺はなかなか友達が出来ず、仲のいい奴が出来そうになった頃には、また転校。幼い頃からそれの繰り返し。俺はやがて友達を作る努力を放棄していた。寂しさを紛らわすために、時間のかかるRPGにどっぷりはまり、そこに展開するファンタジー世界の主人公と自分を重ね合わせることで充足感を得ていた。
そんな中二病まっさかりの中学2年の夏休み、暇つぶしで立ち寄ったレンタルショップのCDコーナーの一角で、海外のハードロックやへヴィメタルバンドのフェアをやっていた。何となくそこで足を止めた俺の目に飛び込んできたのは、荒ぶる狂戦士や、不死のモンスターたちのイラスト。それらのジャンルは、ファンタジー世界とのつながりが何故か強く、アルバムジャケットにも多数使われていて、展開するそのファンタジーワールドに、俺は思わず見入ってしまっていた。
そんな中、火を噴くドラゴン相手に己がギターで敢然と立ち向かうギタリストが描かれた一枚のアルバムを発見する。そのイラストに惹かれ、すぐさまそれをレンタルし、家で聴いた瞬間、脳天を撃ち抜かれるほどの衝撃を受けたことは今でもはっきり覚えている。
クラシックのような複雑で仰々しい展開、超高速のギターソロ、それは、孤剣を背にモンスターたちをなぎ倒しながら、あてなき旅を続けるファンタジー世界の孤独な剣士のイメージそのままだった。
俺はそのままの勢いで、貯金を全額握り締め、中古楽器店に向かった。
こうして、手に入れた愛剣ストームブリンガーを背に、白夜の騎士、ナイト・オブ・ホワイトナイトの伝説が始まった――俺の脳内で。
そんな俺が、冒険者通信――じゃなかった、音楽誌でその存在を知り、強い憧れを抱くことになった一つの伝説がある。
だが、まさか、それが自分に関係することになるとは、そのときの俺は思いもしなかった。