表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

クエスチョン?

作者: 海東翼

ある日僕は、ひとつの疑問の答えを追いかけていた。

その疑問はすなわち謎。


?(クエスチョン)はわかってしまったら何でもなくなる。


疑問を持つから疑問が生まれる。解いても解いても謎。

その疑問や謎に意味はない。

解いたら意味がなくなる。

解かなくても謎は謎のまま。




「クエスチョン」


僕は呟いた。

この部屋に閉じ込められて何時間が経っただろう?

真っ白な部屋。天井はない、しかし空もまた白い。

文字どおり、真っ白な世界。


部屋の真ん中にはテーブルとイス。

テーブルの上には真っ赤なりんごが8つ。



あと、あるのは個室のトイレくらいだ。

ここが何なのか……

──それは不思議とわかる気がする。

けど何をすればここから出られるのかがわからない。


出口がない。ドアすらない。ヒントもない。

答えのない謎解きのようだ。出る方法があるとは思えない。



何よりもまず道具が必要だ。何もなければ何もできない。


そう思ったとき、空からスコップが降ってきた。

しかし、これを使ってどうすればいいのかわからない。

床は掘れるほど柔らかくはなさそうだし。

スコップを当ててみると、カツンっと音がした。


次にハンマーが降ってきた。かなり大きい。

これで壁を打ち破れというのだろうか?

しかし持ち上がらない。とても重い。

無茶なことをしてエネルギーを使ったからか、お腹が減ってきた。

僕はイスに座り、りんごを食べ始めた。

なかなか甘いりんごだ。…美味しい。

あと7個あるけど、少食の僕は1個食べれば十分だ。




椅子に座り、ここから出る方法を考えていると突然、部屋の隅に巨大なライオンが出現した。



なんで…?どうやって…?


そんなことを考えてる間にもライオンは近づいてくる。

僕はスコップを持ち、応戦しようと構える。

その時だった。

何か聞こえる。空からか……?

笑い声が……。


この声は───僕…?


カキンっ!

謎の声に気をとられているうちにライオンが襲ってきた。

何とかスコップではじき……きれるわけなく、僕は壁まではじき飛ばされる。

そして、逃げ場のなくなった僕にライオンは容赦なく止めを刺しにかかってきた。



しかし次の瞬間…

空から巨大な無数の槍が降ってきて、ライオンを串刺しにしていく。


ライオンは動かなくなった、しかし血が流れているわけでもない。

すうっと半透明になったかと思ったら跡形もなく消えてなくなった。


これは何だ?夢なのか?

こんなこと現実に起こるはずない。



謎は解決できるものだ。

脱出する方法がわからなくても、僕がいるここが何なのか……。

…………それはなんとなくわかる。この白い部屋には見覚えがある。


しかし、考えれば考えるほどわけがわからない。


むしろこの部屋以外のことがわからない。


記憶がなくなっている……?


本当にわからないことだらけだ。

空から降ってきた道具の数々は何だったのだろうか?

意味のあるものから意味のないものまで落ちてきたけど。


そして、突然出現したライオン。

出口も入り口もないこの部屋に、僕が入ってきたときもあんな感じで突然だったのだろうか?




何より気になるのは空から聞こえてきた僕の声。まるで楽しんでいるような。



…………!!

繋がった!

不可思議な現象の数々。

これは夢なんかじゃない!

これは、この世界は───。


と、気づいた瞬間、辺りが突然暗闇に覆われた。


というか、白色で構成されたこの世界が崩れていくように…辺り一面が黒色に侵食されていく。


空は真っ黒に、壁も床も、黒い闇に飲み込まれていく。

テーブルやイスも、その上にあったリンゴも闇に消えていく。

………いや、この世界が消えていっているんだ。


足下を見ると、僕のすぐ近く、数センチ前まで闇が迫ってきていた。


僕も……消えてしまうのだ。

この世界から。

この世界ごと。





「クエスチョン」


次にその言葉を言ったとき、僕は見慣れた自分の部屋にいた。

僕の手には携帯ゲーム機。

座布団の上にはゲームのパッケージが開いたまま、雑に置かれている。


そのゲームのタイトルは──『クエスチョン』



僕はこのゲームをしなければならない。

ゲームの画面上では、白い部屋に閉じ込められた…僕そっくりのキャラクターが映っている。


このゲームをクリアしなければ、僕は永遠にあの白い世界から出られない……!


と、その時だった。

ふっと力が抜けた。

力だけじゃない。


……なんだ?今まで僕は何をやっていた?

……僕は……。


手にはケータイゲーム機。

そうか、ゲームをやっているうちに寝てしまったのか。

じゃあもう一回やるか…ゲームスタート!




クソゲークソゲーと言われているこのゲームのタイトルは『クエスチョン~永遠の謎~』

脱出ゲームらしいが、とにかく脱出できないという噂がネット上で流れている。


画面には白い部屋の中に、自分のキャラクターがぽつんと立っている。


スティックを操作して回りを見回すと、部屋の中心にはテーブルとイス。

テーブルの上には、いくつかりんごの入ったカゴが。


それと部屋の隅っこには一個のドア。

ドアを開けてみると、そこはトイレみたいだ。


「なんでトイレ?」

見たところ、脱出に使えるものは何にも無いようだ。


じゃあどうしようか。

このゲームでは最初からアイテムボックスというものを所持してるらしい。

その中には三つのアイテム。

スコップ、ハンマー、サウザントランス。……最後のはよくわからないが、とにかくこれらを駆使して脱出するのだろう。


じゃあとりあえず……


「スコップ」

画面をタッチすると、ポトンっとゲーム内の部屋にスコップが落ちてきた。

なんともシュールな光景。


これでどうしろというのだろう。と戸惑っていると…


『床を叩いてみた、コツンと音がした』

と表示される。


──それだけ!?


「じゃあ、ハンマー」

ドスンッと今度はハンマーが画面はしに落ちてきた。

しかし僕の分身と言えるこのキャラは、それを全然持ち上げられるずにいる。


『持ち上がらないみたいだ』


じゃあこのアイテムの意味って……。

と、そうこうしてる間に画面左上のメーターが残りわずかになってきた。


「これ、お腹の減り具合かな?」

とりあえずりんごを食べるように操作する。


『りんごは残り6個になった』

と表示され、メーターが上がる。


──と次の瞬間、画面端に突然ライオンが出現した。

……ええええ!?

あわててスコップを装備させる。

百獣の王vs農家の少年(?)の戦いが今、始まる。


「ってスコップで立ち向かうの!?なにそれ……フッ…ハハハハ…!」

なんかツボにハマってしまい、笑ってる間に操作キャラはライオンにはじき飛ばされてピンチに。


「おっと…、よしここでサウザントランス!…ってこれホント何なんだろう?」


槍のマークをタッチすると、ズバズバズバッ

上空から降ってきた大量の槍がライオンに突き刺さる。

かわいそうなライオンである。

しかし全年齢対象のゲームということで、血は出ていない。


「……しっかし、なんでライオンなんだろう」

疑問に思いながらボタンを押すとライオンは消えた。

道具も使いきっちゃったし、うーむ、脱出は難しいみたいだ。

と、少しほっとくと、ゲームのキャラクターも何やら思案顔をし始めた。


「へー、無駄に細かいな」

と、妙なところで感心したが、

もう詰んでる気しかしないので、電源を切った。



このゲームはもうしないと思うな。

何てゲームだっけ?

「そうそう、『クエスチョン』……」





その名前を口にしたとき。

何度でも、導かれてしまう。

あの白い部屋へと。



永遠の謎。

小さな疑問…それは解けない謎じゃない。

しかし解いても解いても、ゴールへと辿り着けない。

疑問がある限り、謎は埋められない。

そしてその内、こう思うようになる。



「考えるだけ無駄だ」と。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ