眠らずの森と天才魔女
明日は更新しないです
~ ウェーバー邸 ~
こういうの何ていうのかしら。
太陽も月もわたしを祝福してくれるようだわ。
ああそうだ、吟遊詩人を雇って詩にしてもらうのも良いかも。
新婚旅行はどうしようかしら。ここは都会だし、風光明媚なところがいいわよね。
パパ、ママ、わたしクリス=ウェーバーに運命の人と出会わせてくれてありがとう。
トマス様、素敵な結婚生活を送りましょう。
あちらの当主の奥様、つまりお姑となる人からは今ひとつ受けが悪いが、当主様からは気に入られている。当主様はエルカの剣を見て恐れをなしていたらしい。普通なら情けなく思うところだがこればかりは仕方ないことだ。あれは強いとか弱いではなく、『違う』のだ。人の領域ではないのだから。それと、トマス様の妹君も仲間に……というより、味方にしておかないと。トマス様同様に奔放で、物事に頓着しない性格らしい。結婚式はまだ当分先だけど、打てる手は打っておくことが大事なのよね。結婚って準備が本当に大変。
……などと浮かれていたら、兄が仏頂面でトマス様を連れて帰宅し、「エルカに土下座しろ」などとのたまったのだ。
「お兄さま! それってどういうことよ!」
「どうもこうもない。ちゃんと筋を通して謝れと言っただけだ」
「イヤよ!」
「ダメだ。トマスも一緒だ。諦めろ」
兄と一緒に来たトマスも、
「すまないなクリス。俺もちゃんと頭を下げないとマズイと思っていたんだ」
「ダメですわ!」
「何故だ。我儘な理由で謝罪を拒むなど許さんぞ」
「えっと、その……そうよ! エルカの前で頭を下げて首を晒したら、その瞬間叩き切られるに決まってるじゃありませんか!」
あっ、という顔をトマスはしてる。
兄は……思案顔だ。
「あの子はそういう子です! 謝るとか謝らないとかじゃなくて、距離を取るか隔離してもらうかしないとダメですわ!」
「……あー、それもそうだな」
「そうですわそうですわ!」
「大丈夫だ。お前たちに斬りかからないようきっちりと押し留める」
「んじゃもし剣を振りかぶったらまずお前が死んでくれ。次に俺が死ぬ」
「よかろう。まああの子が殺す気なら一振りで三人纏めて斬られるだろうが」
えっ、その、本気で話しているの?
「あ、あの、お兄さま、冗談ですよ、ね……?」
「クリス、私が冗談でこんなことを言う性格だと思うか」
「トマス様! 本当にそれでよろしいんですの!?」
「ま、流石に殺しは無いだろう、半殺しくらいで許してくれるんじゃないか?」
トマス様はあっけらかんと言い放つ。
豪放磊落が良い所ではあるのだけど、逆に言えばけっこうテキトーな人だ。
「でもでも……!」
「まあ貴族である以上面子は大事だが……他人の面子も同じく大事だからな。この手のことで謝ったことは一度や二度じゃないし」
「えっ!?」
トマス様、それって……。
「クリス、お前気付いてなかったのか?」
「何を、ですか?」
「こいつは夜会の花形だのなんだのと呼ばれているが……つまり、その名が相応しい分だけは遊び慣れているということだ」
「いやー、そのぉ……まあ修羅場になったことも少しな」
トマスさまは、たははとバツが悪そうに笑っているが、私にとっては洒落にも笑い事にもならない。確かにこの人はモテる。それは良いのだ。過去に良い人が何人もいるであろうことくらいはわかる。
「…………具体的に言うと、何人くらい、ですか?」
「ひ、一桁だぞ」
「修羅場になったのはな」
兄が額に手を当てて悩ましげに言葉を継ぎ足す。
「…………ちょっとお尋ねしたいのですが」
「ん? なんだいクリス?」
「過去のことについて、とりあえず今は何も申しません……ですが結婚のお話が具体的になってきたのですから、これまでの関係をちゃんと清算しておりますわよね?」
「…………た、たぶん?」
トマス様の目は明らかに泳いでいる、兄がジト目でトマス様を睨んでいる。
どうしよう。
私の運命の人は。
けっこうダメかもしれない。
「……ともかく、白翼騎士団のモンスター討伐が終わってからの話だ。それまでに考えを纏めておきなさい、良いな」
「……討伐? どういうことですか?」
「土下座というのは、モンスター討伐の報酬ということだ。眠らずの森と厳氷穴のモンスターが増えている話は以前しただろう」
いま、聞き捨てならないことを聞いた。
「……まさか、エルカに討伐の仕事を依頼したんですか?」
「うむ、尋常な腕では無いからな。彼女が居るだけで大きく違う」
「いけません!!!」
ばん! と私はテーブルを叩く。
「ど、どうしたクリス……?」
そう、それはいけない。冒険者が食いつなぐ程度の仕事や、テスカトリポカのようなやむを得ない仕事なら、エルカも問題ない。だが、騎士団の仕事はダメだ。
「食い扶持をつなぐ程度の仕事ならともかく、あの子が騎士になるなどと言い出したらどうなると思いますか!」
このままではまずい。私の結婚どころの話ではなくなる。
「喜ばしいことじゃないか。むしろ力ある人間がただ力を持て余しているほうが問題だと思うぞ。それともクリス。お前は幼馴染が落ちぶれてしまうのを見たいなどと言うつもりではあるまいな」
「……お兄さまにはわかりませんっ!」
兄には、わかるまい。
いや違う。今生きる人間の中では、私にしかわかるまい。
あの人の懸念が、本当の物になってしまう。
★☆★
眠らずの森、厳氷穴の探索の日までは一週間程あったが、その間にわたしが何をしていたかというと、キリアンやシャイナに手伝ってもらっての缶詰の宣伝であった。と言っても大したことではない。品の良い二人が弁当として冒険者としての活動中に食べてもらっただけでそれなりに宣伝になる……というのが開拓者の杖の言い分だった。
「外にいながら寮のご飯を食べられるなんて、凄いです!」
と、シャイナからは尊敬の眼差しで見られたが、それ作ったのわたしじゃないのよね。キリアンの方はしきりと不思議がっていた。缶の作り方がどうにも気になるらしい。
「僕の家も商家との繋がりはあるので、この価値はわかるつもりです……これを大量に開発できたら凄いことになりますよ」
という感想を貰った。でもその、大量に作るってところに困ってるところなのだ。
……いっそキリアンに作り方バラして丸投げしちゃおうかしら……でも仕事丸投げしてお金だけ貰おうってのも図々しい話よね……お金がらみの話だと人間関係壊れるっていうし流石にキリアンに裏切られたらショックだし。なかなか悩ましい。課題は課題として残ったままのため、騎士団の方にも数食分あるだけで全員分を賄うなどとてもできない状態だった。ゲイルは残念がっていた。ごめんなさい。
で、そんなことをしながらもあっという間に数日が過ぎて、『迷わずの森』と、その奥の『厳氷穴』の探索の日が訪れた。
★☆★
もうそろそろ『眠らずの森』に到着となる。騎士団が私用の馬も用意してくれていたので、ちょっとピクニック気分。普段ならぽちの背中に乗って行くから景色を楽しむ暇もないのよね。ちなみに馬に乗っているのは、わたし以外では騎士団長ガルドとゲイル、そして救護班の班長の3人だけで、荷運び用の馬車の馬は御者が轡を引いて一緒に歩いている。徒歩の人は、まあ、その、頑張って。
「わんっ! わふっ!」
「ぽちちゃーん、もうそろそろですよー。蝶々とか芋虫は食べちゃめーだからね、毒だから」
森の中や洞窟の中ではぽちちゃんの背中に乗るつもりだが、それまでは別々だ。せっかく馬を用意してもらったのだし「行軍中に犬に乗っている姿はちょっと……」と難色を示されてしまった。まあそれもそうよね……。
「わおん!」
二つの首から機嫌の良い咆哮が聞こえる。やっぱり遠出はこの子にとっても楽しいのよね。思い返してみれば、今回のような規模でのダンジョン攻略などは初めてかもしれない。荷物も持ってもらえるし湯も使えそうだし、楽ちんで助かるわ。
「エルカ様、もう少しで到着いたします」
ゲイルが説明をするが、私の目にも森が見えている。
「うん、まあ何度も来たから大丈夫よ」
目先の森では鬱蒼とした木々が密集し、太陽が枝葉に遮られて仄暗く湿った空気が延々と続いている。ここを住処とするモンスターは昆虫と獣が主となる。なんといっても昆虫の恐ろしさは物量。そして次に速度だ。足の遅い獣ならばまだ逃げようもあるが、群れをなして空を飛ぶ昆虫がもし交易馬車などを襲ったらそれはそれは恐ろしいことになる。今はまだ生息域は広がっては居ないが、ゲイル達はそれを現実的な危機として考えている。わたしとしても交易が滞っての食料高騰などは困るし、ちょっとくらい本気出してもいいかな。
そう考えている間に、
「これより『眠らずの森』へと入る。良いな!」
「おう!」
全員が腹に力の籠もった返事を返す。
「うむ、皆気合入っているな」
団長のガルドが、自慢のひげをしごきながら満足そうに頷く。
「すみませんエルカ様、一言で良いので、なにかお言葉を頂戴してもよろしいですか?」
「え、わたし? めっちゃ部外者なんだけど……」
「皆、あなたを前に気を抜くまいと意識しています。」
「あらやだそんな」
「具体的に言いますと、岩鎧熊や碧石クワガタなどよりも、あなたを畏れています」
「それは聞きたくなかったのですが……はぁ、わかりました」
まったく乙女をなんだと思っているのだ。
私は馬に乗ったまま向きを変えて、騎士団員達を見下ろす。
ま、悪くない面構えじゃない。
「えー、まあ初めてのダンジョン探索ということですが……」
とりあえず生きて帰りましょうね、とか、気楽にね……なんて言うのもちょっと空気読めてないわよね。うーん……ちょっと気合入れてさしあげましょう。
「お前たちはわたしの拳を受けた! だが、逃げずにここにいる!」
「「「おう!」」」
「いま、この場所に! 腰抜けは居ない! 違うか!!!」
「「「おう!」」」
「もし恐ろしいなどと抜かす腰抜けが居るなら、今あたしが引導を渡してやる!!! 虫や獣に腹を食い破られるより遥かに苦しまずに済むぞ!!!」
「ここに腰抜けはいない!」 「そうだ!」
「ならばわたしに勇気を示せ!!! 良いな貴様ら!!!」
「「「おおーーーーーー!!!!!!」」」
……ふぅ、こういう場って緊張するわ。
「お見事でした」
ゲイルが労ってくる。いえいえどういたしまして。
ガルドは何やら微妙な表情をしていた。
「なあ、団長って儂じゃよね?」
「そうですとも」
ゲイルは、ガルドと目を合わさずに答える。
「……儂、要る?」
「…………それではお前たち! 作戦は頭に叩き込んでいるな! 先遣隊前へ!」
ゲイルの指示に従い、騎士たちが一斉に行動を開始した。
よし、わたしもウォーミングアップしなきゃ。
「ねえ、儂、要る?」
★☆★
作戦と言ってもさほど難しいものではない。
先遣部隊が先頭を進んで森の状況を把握して、団長達やわたしに情報を伝える。それを元に厳氷穴までの進路の安全を確保しつつ本体が移動、という流れだ。正直言うとあくびが出るほど暇だ。わたし一人ならこんなにゆっくりとした移動はしない。もっとも、モンスターの討伐こそが目的だし50人もいると渋滞を引き起こす。こればかりは仕方ないのだろう。
「ねえ、そろそろわたしも出て良いかしら?」
「そうですね……今のところ特筆すべき敵もおりませんが、それでもよければ」
「何処を手伝う?」
「厳氷穴の方向の先遣部隊ですね。一番モンスターとの遭遇率が高いので」
「わかった、いってくるわ。ぽち!」
「わおん!」
「……その、犬の方は大丈夫ですか?」
「こないだはビッグバイパーをわたしの手伝いなしで食ってたから大丈夫よ。ゴーストなんかは苦手なんだけど」
「……そうですか」
ゲイルは悩ましげに相槌を打つ。
「ん? なんかマズい? この子、ダンジョン探索にはうってつけよ」
「いえ、エルカ様が強いのはともかく、何故犬までもそこまで強いのかと……」
「あー、色々あってね……またそのうち説明するわ」
「そうして頂けると」
よし、それでは行こう。ぽちちゃんもお腹すかせてるし。
★☆★
ぽちちゃんに乗って森を進むと、剣戟の音が響いてきた。
おっ、この金属がこすれ合う音と羽音は碧石クワガタかしら。素材としては高値だけどこれに殺られちゃう新人冒険者も多いのよねー。甲殻の隙間を狙えばすぐに殺せるけど、ゆっくりしてたら群が来て反撃されるし。それに手のひらサイズの個体も居れば赤子ほどの大きさを誇る個体も居る。油断すると大物が出てきて噛み殺られるというのがありがちな冒険者の末路だ。
で、案の定、数に押され気味のようだった。
「馬鹿野郎! 時間をかけたら押し戻されるぞ!」
「おう!」
「氷魔法でなぎ払う! 詠唱準備! 使えない奴は俺に続け!」
「おう!」
そうそう。素材を惜しんで魔法で仕留めるのを躊躇うと悪循環になるのよ。ちょっと判断遅いけど許してあげよう。このままじゃ前衛張ってる連中が怪我するでしょうし。
さーて、それじゃいきますか。
「クリュセイス流奥義、花筏」
わたしは跳躍して碧石クワガタの群の中へするりと潜り込む。
軍隊の進軍や獣の群れの突進というのは進行方向に対してべらぼうに強い。故にあえてその流れに逆らわずに群れの中に浸透し、中から食い破る技だ。大事なのは群の頭がどう動くかを読み切ること、そして心動かされず拍子と速さを合わせること。そして流れと一体と化かして突進力を受け流し、剣戟の安全圏を構築することで攻防一体となす。踊るように両の剣を振るえば、両断された碧石クワガタの死体がぼとりぼとりと落ちていく。死体はちょっと見てて美しくないわね。あ、ぽちちゃん、甲殻はお腹壊すから食べちゃダメでしょ。
「えっ!? エルカ様!?」
「ボサッとしない! はやく体勢を整えて魔法唱えなさい!」
「ま、巻き込んでしまいます!」
「わたしがやらわれるわけないでしょ!」
「はっ、はいっ! ……凍てつきし氷の精よ、わが杖より現れ冬の畏怖を示せ! アイスブリザード!!!」
氷の嵐が現れ、クワガタの群れを飲み込んでいく。
わたしは剣先を回して氷雪の勢いを殺す。円の動きは受けの基本だ。手の平でやる方が簡単だが、わざわざ剣を放すのも面倒だった。
「だっ、大丈夫……ですね、やはり」
魔法を放った騎士が駆け寄ってきた。
ふむ、部隊に一人か二人は魔法使いが配置されているようね。
「当たり前でしょう、範囲攻撃で剣士を殺せるわけがないじゃない」
「い、いや、ええと……そうですね」
「もう少し早い判断しなきゃダメよ。魔力は大事だけど、出し惜しみして死んだら元も子も無いんだから」
「ハイッ!」
びしっと騎士は敬礼して答えた。
「エルカ様、助太刀ありがとうございます。先日は、世話になりました」
お、マーカスさんも元気だ。
心が折れてないかちょっと心配だったのよね。
「そっちは大丈夫?」
「軽傷を負った者が2名おりますが重傷者はおりません」
「あら良かった……ていうか、あなたもちゃんと治ったのよね」
「ええ、3日で完治はしました。ポーションも提供して頂いたようで、感謝いたします」
「いいのよ、ところで……」
「ハッ、なんでしょう!」
「ええと、別に普通の話し方でいいわよ。あなたそんなにきびきびしてたっけ?」
「今は作戦中であります故。それに、以前のお手合わせで、自分の未熟を痛感しました! どうか師匠と呼ばせて頂きたく!」
「ええー……師匠は嫌だなぁ」
「そんな! では何とお呼びすれば!」
「普通でいいわよ普通で……どうしても敬称を付けたいなら、お嬢様とか」
「ハッ、承知致しましたお嬢様!」
……なんか違う。
こう、何というか、瀟洒な庭園でのお茶会や迎賓館での夜会で、糊の効いたシャツと燕尾服を来た紳士に甘い声で「お嬢様」とささやいてほしいのであって、虫の血で汚れた鎧と猛々しい息で「お師匠様!」みたいなイントネーションでお嬢様と呼ばれるのは、微妙に違う。
『こんなところで冗談言ってんなよ……ほれ、なんかデケえの来るぞ』
「あら、岩鎧熊ね。大物だわ」
杖の奴も意外と鋭いわね。
もしかしたらわたしよりも気配を察知できる範囲は広いのかしら。
「……熊、ですか? どちらの方から」
「ほら、耳を澄ませなさい。もう少し……」
少しずつ、少しずつ足音が聞こえてくる。
近づいてきた……。
ずしん…………ずしん………ずしん……。
ずしん!!!
「へぇ、ここまで大物の岩鎧熊は初めてだわ」
「な、なんだこの大きさは……!? くっ、本部に至急連絡!」
「はっ!」
マーカスは慌てて指示を飛ばす。
確かに驚くのも無理は無いだろう。身の丈3mほど、1階建物の屋根程度の背の高さだ。岩鎧熊は成長すればするほど、身にまとった岩状の鎧も成長する。この熊の鎧は、もはや全身鎧と言って差し支えないほどだ。ひよっこ騎士の刀剣が通じる類ではない。
まあ鋼鉄ほどの硬さではないけど、それ以上に突進したときの重さこそが一般人にとっては厄介であろう。うーん、まあ今この瞬間に叩き切っても良いんだけど……。
「落ち着きなさい。一匹じゃないわ」
「えっ?」
見れば、その大物の後ろから、5匹ほどの岩鎧熊が現れた。
この8人程度の部隊だと苦労しそうね。まあ本隊もすぐ後ろに居るから応援はすぐ来るでしょうけど……。
「群れを作るだと……馬鹿な!」
「モンスターの異常発生ってのも本当のようねー。それじゃ、わたしあの大物相手にするから、他のは何とかして見せなさい。応援を呼んでも大人数じゃ上手く動けないわよ。エルフじゃあるまいし」
「……っ!!!」
「あの熊、手加減こそしないけどわたしの拳よりは遥かに遅いわ。大物はともかく、他の若い熊は成長期ね、自分の重量に振り回されて老練な動きはできないでしょう」
「……なるほど」
「個々の能力が突出した冒険者は嫌がる手合だけど、集団行動を訓練している騎士にとっては、良いカモのはずよ」
「…………」
「もちろん、訓練をしていない騎士は死ぬかもしれないけれど」
「違います! 俺達は違う! 王都で足の引っ張り合いをしてる似非騎士団なんかとは!」
マーカスさんも良い面構えになってきたわね。殴った甲斐があったものだわ。
「わたしがあの大物を倒すより時間がかかったら……そうね、お仕置きが必要ね?」
騎士達はその言葉を聞いて、戦慄を覚えたようだった。
やだなー、わたしそんな怖いことしないのに。
『……この鬼畜』
あーあーきこえなーい。
「行くぞ手前ら! 気合入れろ!」
マーカスが皆を奮い立たせる。さーて今晩は熊鍋ね。