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大捕物と天才魔女

※2015/5/11 9話冒頭で書き忘れてたシーンがあったので修正しました。すみません※





 厳氷穴の下層に閃光が迸り、そして衝撃と轟音が走る。

 もうもうと煙が立ち上……っては居ない。あたりにはこれといった被害はなかった。

 落盤もしていない。


「……あれ? どうなってんの?」


『どうなってんの? じゃねーよ馬鹿! なんで逃げろっつったのに逃げねえ!』


「ぽちちゃんが居るでしょーが! ……って、あれ? 意外とケガが少ない……ていうか、無いわね」


『防いでやったんだよ、見ろ』


「あら?」


 杖に促されて周囲を見渡すと、ガラスか何かのような、きらめく透明の壁があった。そこを境として煙が一切入ってこない。まるで凪の水面のように境目が区切られている。


『よし、耐衝撃フィールド解除』


 だがそれは杖の言葉を合図に消えていった。

 白煙の対流が穏やかに流れこんでくる。少しけむい。


「……もしかして、守ってくれた?」


 だが、杖は弱々しい光を放つばかりだ。

 自分の機能を使ったときの自慢気な色が無い。


『お前と、周囲の壁や天井は何とか保護できたが……犬ッコロの方は間に合わなかった』


「なんですって!」


『爆発する瞬間、アイツが魔族の爆弾をもぎとったんだ。その瞬間に起爆しちまった……もうあれでは、助かっては……』


「ぽちちゃーん! ダメじゃないのー!」


『聞いてくれエルカ、お前のぽちは……』


「ぽちちゃーん!」


 そのとき、ガレキの中からがたり、と音がした。


「わふぅ……げほっ……」


『……この深傷じゃ、治そうにも……』


 見れば、ぽちちゃんは凄まじい怪我を追っていた。まさしく満身創痍と言うに相応しい。肉が裂け、骨が露出し、そこからまた骨が傷ついている。出血も酷い。喉も傷ついたのか、血を吐いた。


『すまねえ……守れなかった……』


「ああ、そういえば説明してなかったっけ。ほら」


『エルカ、現実を見てくれ、この傷じゃ…………あれ? 傷、浅くなって……え?』


 だがこの程度の傷では、ウチのぽちちゃんにとって大した問題ではない。まるで時計を巻き戻すように、骨は繋がって肉が再生し、傷がふさがっていく。


「「わん!」」


 さっきまでは喉が傷ついていたせいで声が上手く出なかったのだろう。

 今は二つの首どちらも元気に吠えることができる。


『エルカさん、何すかこれ』


「この子、回復力が凄いのよ。ほらぽちー、体直してお腹減ったでしょ。とりあえずおやつ食べなさい」


「ワン!」「わおん!」


 缶詰を開けて、中の具の腸詰めだけをぽちに与えた。スープは塩分が高いのでわたしの井の中へ処分処分。ぽちちゃんは一目散にがつがつと食べている。回復すると何故か凄くお腹減らすのよね。


『あのー、ちょっとエルカさん』


「別に大したことじゃないわよ。そう、あれは5年前だったかしら……」




★☆★




 5年前。


 わたしが11歳の頃の話だ。


 その頃はバロル魔法学園の暮らしにも慣れて、普通に魔法が使えて、その頃はクリスとも毎日遊んでて、すごく楽しかったわ。魔法のコントロールは段々悪くなっていたけど、威力の方は学園トップ。色んな研究者や博士からはウチの研究室に来ないかって誘いもひっきりなしで……まあ、ほんのちょっとだけ調子に乗ってたかも。


 で、ウチの学園って使い魔を飼えるのは知ってるでしょ。中庭に色んなペットが居て。モンスターを飼い慣らす人も居るけど、わたしが選んだのは普通の犬だったわ。


「……普通? 首はひとつ?」


「ええ、そのときまではね」


 そう、あの頃は子犬で体も小さかった。ちなみに雑種だった。だから使い魔のいる中庭では他の子の使い魔にいじめられないように庭番の人に見ててくれるようお願いしたり。寒い日は一緒に寝たり……。その頃はこの子達、体が弱くて面倒を見るのに苦労したわ。


 で、丁度その頃、魔法学園でゴーレム馬車の実験が行われてたのよ。


「へぇ、そんなもんがあるのか」


「馬の形のゴーレムを使った実験ね。当時は荷車や人を運ぶ乗り物を作るために、色んなアイディアが試されてたのよ。でかい馬のゴーレムを作って中に乗る方式とか、馬車に足を生やしたりとか。結局は車輪を動かすのが一番効率的だって話に落ち着いたみたいだけど」


 っと、話が逸れたわね。


 ともかく馬のゴーレムは制御が難しいらしくて暴走や事故をよく起こしてたわ。それで一度、中庭に暴走したゴーレムが突っ込んだことがあって……。他の使い魔は体が大きかったり固かったり、空を飛べたり、それなりに強かったから大丈夫だったのよ。でもぽちは普通の子だったから……。


『……事故に巻き込まれた、と』


 ええ、そうよ。


 ほう瀕死の状態で、回復魔法が得意な人にお願いしても効果が無かった。回復魔法って、「もう助からない」ってラインがあるのよね。寿命とか、末期の病気とか、血を流しすぎてるとか。ぽちもそんな状態だったわ。


 ……でも、諦められるわけがないでしょ?


『……それで?』


 とにかく全力で回復魔法を使ったの。


 できるかぎりの、ありったけの魔力を込めて。


『……全力ぶっぱ?』


 うん、全力ぶっぱ。


『……そうか、やっちゃったか』


 で、死ぬしかなかった体がみるみるうちに再生されていって……何故か首が二つになっちゃったの。


『そっかー……』


 ちょっと、何呆れてんのよ。




★☆★




 ひとしきり話を聞いて悩んでいた杖がぽちを呼んだ。


『おい犬ッコロ』


「ぽちってちゃんと呼びなさいよ」


『わかったよ。ぽち、俺の宝玉のところを舐めてみてくれ』


「……変な趣味じゃないでしょうね」


『んなわけねーだろ! 真面目な話! 健康診断みたいなもんだ!』


「まあ良いけど……ぽち」


「「わん!」」


 ぽちはわたしの意をすぐに汲んでくれる。

 ぺろりと杖の先端を舐めると、宝玉が複雑な色合いをしめした。こんな状態は初めてだ。そしてまた何やら唸っている。


『おいおいおいおい……なんだこれ』


「どうしたのよ」


『…………こいつ癌じゃね?』


「は? ガン?」


『なんだこれ……転移しまくってる』


 え、なに? 今ガンって言った? 病気の?


「ちょ、ちょ、ちょっと! 何言ってんのよ! ぽちちゃんは健康でしょうが!」


 わたしは杖を揺すって問い詰めた。


『あ、ああ、確かに健康そのものだ。ちょっと誤解を招く言い方だったな。正確に言えば悪性腫瘍化しない万能細胞が全身に存在している』


 ……なんて言ってるかわかんないんだけど。


『ええい科学の発達してねえ国はこれだから……いや、発達しててもコイツ理系科目とか苦手そうだしな……』


「今軽くわたしのことディスらなかった?」


『ディスってねえよ。説明する』


 弱々しく宝玉が明滅する。こいつ嘘がわかりやすい。


『人間、傷が治ったり体が成長したりってのは限界がある。言ってる意味はわかるか?』


「んー、まあ、なんとなく」


『肉体ってのは細胞という非常に小さい単位で出来ている。古い細胞が死んで新たな細胞が生まれてってのを繰り返すことで、体が成長したり怪我した箇所が修復されたりする。若い時はそのサイクルが短く、老いると遅くなる。老人は怪我をすると治りにくいだろ? で、細胞が生まれ変わるサイクルってのには限界があって、それをヘイフリック限界と呼ぶ。人には寿命があるように、人を構成する細かい部品にもまた寿命があるということだ。ここまではわかるな?』


「お、おう」


『ヘイフリック限界と人間の老化現象は微妙に違う概念だが、そこは省略する。ともかくこの犬ッコロの体を構成する細胞にはヘイフリック限界が無く、そして新陳代謝がとんでもなく早い。つーか速い。どんな怪我の状態からでも肉体が凄まじい速度で再生する。本来この種類の万能細胞は容易に癌化するはずなんだが、こいつの体内ではそれを防ぐシステムが働いている。恐らくお前の暴走した回復魔法によって遺伝子がキメラ化させちまったためだ。首の2つあるのは、2種類の遺伝子が同時に存在していることを示していて、それぞれの細胞がそれぞれの異常を相互監視している状態だが、これは回復魔法に込められた魔力が飽和して回復を飛び越えて蘇生や誕生、命を司る魔法に踏み込んだために…………』


「…………ごめん、ちょっと待って。ストップ」


『なんだ、説明が乗ってきたところで』


 この杖は興奮すると点滅のサイクルが短くなってなんかウザい。


「とりあえず、ぽちちゃんは健康なのよね?」


『そうだ』


「で、体が再生する理由も、首が2つになった理由もわかった」


『おうとも』


「今後の危険は?」


『今診察できる範囲では無いと言えるな。病気も怪我も一切寄せ付けていないから、むしろ倒せる奴がいたら教えてほしいくらいだ。それに、もし何か病気や疾患があるとしたら既に起きてなきゃおかしい』


「………………よしオッケイ! 問題ない!」


 とりあえず難しいことは置いておく。

 ぽちちゃんが病気じゃない。健康。

 食欲旺盛。ついでに良い子。

 つまりノープロブレム。


『…………なんかすまん、難しかったよな』


「謝られると逆にムカつく」


 何故だかわからないがバカにされた感を拭えない。

 あーもう疲れた。仕事とも終わったしさっさと帰りたくなってきたわね。


「あ、そういえばあの魔族は?」


『気絶してるぜ。犬ッコロが爆破のマジックアイテムをもぎとったときに、ちょうど犬ッコロの体が盾になったみたいだな』


「まったく、自爆しようとして生き残ってるんだから感謝することね」


 ふんじばるにしても紐も縄もないしどうしよう。

 ……などと思いあぐねていたところで、騎士団のゲイル達の声が響いた。


「エルカさまー! 大丈夫ですか!」


「大丈夫よー!」


 よし、これで魔族も引き渡せる。

 そして……。


「人手が集まったわね……。これでホーンエレファントも持って帰れるわ!」


『……こういうことには抜け目ねえのな、お前』




★☆★




 その後は騎士団達と合流して魔族を引き渡し、そしてホーンエレファントもまた回収する運びとなった。わたしではなくこの魔族が倒したわけだが、ゲリラという重犯罪者であるが故に所有権は無い。結果としてわたしの物になるのが通例だとゲイルは説明してくれた。やった! どこに飾ろうかしら?

 そして初めての実戦を大金星で終えて凱旋したバロル白翼騎士団は、冒険者や他の騎士団の間で噂になった。なんでも桑衛族というのは魔族の中でも珍しく、様々な情報を得るために騎士団どうしで尋問する権利の奪い合いになりそうとのことだ。可哀相だが仕方あるまい。一歩間違えれば街道を歩く人間が犠牲になったわけだし。

 で、わたしの方は仕事を終えた充足感を味わいつつ、報酬を楽しみにしていた。


「それで、トマスの方から提案があったのです」


「提案? なに?」


 仕事が終わって数日後、わたしはゲイルから呼び出されて、再びバロル白翼騎士団の詰め所に来ていた。わたしが来たのを知ると何故か皆が緊張するようになってしまった。別に怒るつもりとか無いのに。そしてマーカスさんが怒声と見紛う声で「お嬢様!」と呼ぶので困る。もっとジェントルマンな声で呼んでほしい。


「正式な謝罪をしたという証書を残しておきたいという話を出してきまして」


「証書?」


 なんか話がややこしくなってるだけど。


「まあつまり、貴族の文書館とそれぞれの家に書類を残して、事実として保存しようということですね」


「わたしは別に良いけど……それで困るのって向こうの方じゃないかしら?」


『いや、多分違うな』


「そうですね」


 杖が言葉を挟み、ゲイルが同意する。


「……どういうこと?」


 ちょっと馬鹿みたいな問いかけになってしまったが、ゲイルは気を悪くする事なく答えた。


「つまりは『それ以上の報復はやめてくれ』という話でしょうね。謝罪してどういう賠償をしたかを記録を残すことで、お互いのトラブルは終わったしこれ以上の賠償は受けられませんという決着を付けたいのでしょう」


「あー……」


 確かに土下座させて詫料も払わせて、となって、更に矢継ぎ早に要求されたらたまったものではないだろう。わたし自身そんなことをするつもりは毛頭ないが、この手のトラブルでは金の亡者のように押して押して要求しまくる、というスタンスの貴族も存在する。


「恐らく文面に、詫び料の追加要求や別の賠償を求めるのを禁じる内容も加えられて提案してくると思います」


「見てないから何とも言えないけど、ちゃんと証書を文書館に出す前に見せてくれたり意見言ったりしても良いのよね?」


「それは当然でしょうね。それに証書である以上、エルカ様の署名捺印がなければ無効です。まずは案として書かせてエルカ様にお見せするようにします」


「わかったわ」


 果報は寝て待てってことね。とりあえずお任せしよう。

 事務仕事に慣れた人が居ると楽で助かるわ。


「それと、養子の件では幾つか信頼できる筋をあたっています。もう少々お待ちいただけますか」


「ええ、大丈夫よ」


「では、次に報酬の分配についてお話しましょうか。モンスター討伐の報酬について見積りが出ましたので、ご確認ください」


「そうね!」


 そしてお金の話にも明るい。

 あーもうゲイルさん一家に一人欲しい。




★☆★




 魔法学園に帰ると、すぐに校門のところでキリアンとシャイナに捕まった。


 どうやらこの子達はわたしの心配をしてくれていたようで、無事を知らせるとホッとした様子だった。わたしの心配をしてくれる人が居るなんて嬉しい。冒険者ギルドの仕事でモンスター退治をしても「モンスターの方が可哀想だ」とか「お前の戦いを見たせいで新人が自信を無くす」などと抜かす連中ばかりだったので新鮮味がある。


「もう、わたしが怪我するはずないじゃない」


「そうですよね! お姉さまですものね!」


 シャイナはころころと笑って答えてくれる。


「二人は調子どう? 冒険者ギルドの受付にいくまでに突っかかってくるアホな先輩とか居ない?」


「いましたわ」


 シャイナが頷く。


「潰すわ」


「だ、大丈夫です! ちゃんと自分たちで何とかしました!」


 キリアンは大慌てでわたしを止めようとする。まったく、心配させるんじゃないわよ。


「あらそう? やらなくて良い?」


「ちゃんと魔法使いだってことを示したら納得して貰えたので……。別に嫌がらせとかじゃなくて、実力不足の子供が来た時の門前払いをする役目の人がいるんだそうです」


「へぇー、あいつらちゃんと仕事してるじゃない」


「見くびられたのはちょっと悔しいですけどね。でも仕事の結果を見せつけてやります」


「……そっか、頑張れ」


 冒険者の仕事を続けていくつもりはわたしは無いけど、それをやりたいと決めている友達がいるなら、ちゃんと応援してあげよう。たまに訓練もしてあげても良い。でも耐えられるかしら……。


「そうだ、缶詰なんですけど、売ってくれないかって話が幾つか来てるんですよ」


「あら、本当?」


「冒険者ギルドの方からも引き合いが来てまして……。纏まった数ができるなら是非とも買いたいと」


「うーん……」


 どうしよう。ギルドかぁ……わたしが話をするとややこしくなりそうだし……。


「……秘密を守れる職人の知り合いとか居たりしない?」


「秘密を守る、となると缶詰を作るため……ですね?」


「うん、まあ細かいところはまだ秘密にしておきたいから……」


 キリアンは難しい顔をしている。貴族によってはお抱えの職人なども居たりする。キリアンの家は商売に明るいためにそういう人間もいるはずだろう。だがそういう職人こそ何か貴族の秘密を持っているものだ。貸してくれ譲ってくれと言ったところで認められるものではない。むしろこちらが缶詰の製法などを明かす方が筋と言うものだろう。


「キリアン、実家の手を借りてはいかがかしら?」


「うーん……」


「あ、無理しなくて良いのよ。ごめんね変なことに巻き込んじゃって」


「いえ、そういうことではないんです。実家に相談したらむしろ積極的に仕事に取り組んでくれると思いますが、その分利益を求めると言いますか……エルカさんの取り分が減ることになりますよ?」


「むしろ元手が無いから、多少でも見返りがあるなら助かるわ」


「そうですか……では、ちょっと計画を立ててみます。また後で相談に伺っても良いですか?」


「ええ、もちろん」


 お金が入ることだし、何かご馳走してあげても良いわね。


「ところで、お姉さまはお仕事の方どうでした?」


「あ、そうよ聞いてよ! なんとホーンエレファントを見つけたの!」


「……え?」


 キリアン達が、ぽかんとした表情になった。

 ふふふ、流石にこれには驚いたようね。


「凄いのよ、琥珀に水晶にアメジストに……鑑定の商人を呼び出すだけで凄い騒ぎになるわ!」


「…………あ、あの、本当に?」


「ええ、そうよ。白翼騎士団の詰め所に保管してあるけど、一度見に行くといいわ」


 キリアンとシャイナは顔を見合わせている。

 珍しく変な顔してるわね。


「…………すみません、その話、他の人にしました?」


「騎士団以外にはあなた達が初めてよ」


 どうにもキリアン達は神妙な様子だ。


「……絶対、他の人に言ったらマズいです」


「お、お姉さま、今の状況は危険ですわ……」


「ん? どうしたの?」


 危険? 何を言ってるのかしら。美術品の盗難は多いけれど騎士団に潜り込んで大物を盗むアホが居るとも思えないし……。

 などと思っていると、魔法学園の敷地内だというのにむくつけき男共がどやどやとやってきた。皆、鎧兜を装備して捕物用のさすまたや槍を持っている。いったい何かしら、無礼な連中ね。ここをどこだと思っているのかしら……と、不機嫌に睨めつけていると、その中の先頭の人間の目がわたしと合った。


「おい、あれだ……刺激するな、気をつけろ」


 どうやらその中の一人がわたしに目をつけた。

 整然とした足取りで10人ほどの男たちが近づいてくる。

 刺激したくないなら言葉遣いや態度が違うんじゃないの。


「何よ、人を睨んでおいて」


「あああ……遅かった……」


 キリアンが頭を抱え、その腕をシャイナが引いている。

 え? なに?


「そこの二人は関係ないな。離れなさい」


 そして二人とわたしの間に騎士が割って入る。

 髭に白髪の混じった壮年の男だ。目つきは真面目そうだが、わたしを見てどこか焦りを感じている。強さくらいはわかるようね。


「なによ」


 男は兜を抜いた。白髪交じりのごま塩頭で、痩せているが鋭い面構えだ。


「蒼盾騎士団団長、ウォルト=ガリクソンです。貴女には第一種禁呪使用及び屍体型モンスター製造の容疑がかかっています。どうかご同行をお願い致します」


次回は木曜~金曜に

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