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90 マダム
「高校生デビューなら瑞葉の方が酷いだろっ」
美雪が瑞葉の明るく染まった髪の毛を指摘すると、瑞葉は海彩に近寄った。
「……ちょっと、雪ちゃんが自分の髪型を高校生デビューだと認めましたわよ奥さん」
瑞葉が海彩の耳元で囁く、美雪に聞こえる声量で。
「い、いいだろ、このくらいっ。それに瑞葉に比べれば全然マシだろっ」
「……開き直ってますわよ~奥さん」
海彩も瑞葉の耳元で囁く、美雪に聞こえる声量で。
「……もう、髪元に戻す」
美雪は頭の後ろに手を伸ばして、ヘアゴムを解こうとする。
「待って雪ちゃん! 今の雪ちゃんも可愛いよ!」
「そうだよ~! 可愛いのにもったいないよ~!」
慌てて止めようとする瑞葉と海彩。美雪は硬直し、照れた顔が林檎の様に赤くなっていく。
「……可愛いって言われて葛藤してますわよ奥さん」
「……そこがまたさらに可愛いんですのよ~奥さん」
瑞葉と海彩は囁き合う。美雪の顔は既に真っ赤だ。
「……可愛いとか可愛くないとかはどうでもいいから、似合ってないかどうかだけ教えて」
「大丈夫だよ! 可愛いよ!」