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79 既成事実
「あたし、このうどん屋さん来るの初めてだったんだー!」
瑞葉が店内を見回す。
「あ、わたしも」
「高校生デビューだねっ」
「うーん、ちょっと違う気がする」
「あのね~実はアタシ何回かこのお店来てるんだけど、初めてってことにした方がいい~?」
「いいよ、無理にわたしらに合わせなくても。それにそこまで言っちゃたらもうどうしようもないよ」
「えへへ~」
「海彩ちゃんはあたしたちの先輩だね」
「たぶん数時間くらいしか差、ないけどな」
「でも雪ちゃんと瑞葉と来たのは今日が初めてだよ~」
「知ってるよ。記憶喪失じゃないんだから」
「雪ちゃん記憶喪失なの!?」
「例えだよっ」
「アタシたちの子どもの名前ちゃんと覚えてる~?」
「そんな過去存在しない! 記憶を捏造すんな!」




