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6 未確定
「どうしたの? 大丈夫?」
到頭その場に座り込んでしまった美雪を見て、隣の柱に凭れ掛かっていた不良は近付いて美雪に声を掛けた。
「えっ、あ、はい!」
まさか話し掛けられると思っていなかった美雪は思わず顔を上げ、自分を見下ろす不良と目を合わせてしまった。朝日による逆光で陰る不良の顔は、一際不気味に見える。
「……っ!」
美雪は声にならない悲鳴を上げ、痙攣したかのように一瞬大きく体を震わした。それが滑稽に見えたのか、目の前にいる不良は笑いだす。
「あははっ。そんなにおびえてどうしたの? 雪ちゃん」
「……へ?」
自分の愛称が不良の口から出てきたことで、美雪が無意識の内に全身に込めていた力がふっと抜けて間抜けな声が零れた。
そういえばこの不良の声はすごく聞き覚えのある声だぞ、と美雪は不良の顔をじいっと見つめる。今はもう怖くなかった。
「なになに雪ちゃん。あたしの顔になにかついてる? それともちゅーしてくれるの?」
「おまえ……瑞葉だな?」