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54 おもちゃ
「雪ちゃんひどいよ! いつもあたしのこと雑に相手してたなんて!」
瑞葉が泣きそうな作り顔をする。美雪はそれをすぐに嘘泣きだと見破れたけれど、出会ってからまだ数時間も経っていない三田先生は困り果てた顔をしていた。
「いつもじゃないよ。面倒くさいときだけ」
「うわあああん! あたしは雪ちゃんにとってめんどくさい女なんだあああ!」
「うわ、面倒くさいっ」
美雪は本心を漏らす。
「……謝って!」
瑞葉が両手で顔を隠し、ぷるぷると震えている。これは泣いたことによる嗚咽でも、怒りにより体を震わしているわけでもなく、三田先生の困っている姿に笑いを堪えているのだろう。
「そうだよ~、雪ちゃん謝って~!」
なぜか海彩も瑞葉の味方になっている。
「はー……。瑞葉ごめん、これからは瑞葉のこと雑に扱ったりなんてしないよ」
美雪が謝ると瑞葉が顔を上げる。
「先生ってあだ名とかあるの?」
「雑だよ! わたしの扱い雑!」
瑞葉と海彩があははっと笑った。