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51 寧ろ何で
「初めまして。今日から一年このクラスの担任をさせて頂く三田友恵です」
そう自己紹介する先生は、アンダーリムの眼鏡を掛け、側頭部よりもやや後ろで一つに束ねた髪の毛を肩の前に流し、スーツを着ている。先程入学式前に体育館へ先導してくれた先生と同一人物だった。
「話が違うよ~雪ちゃん~」
海彩が振り返り、後ろの席に座る美雪に不満を漏らす。
「しーっ。今は静かに。ちゃんと前向いてて」
「う~……」
「さっきと全く同じやり取りじゃないか、これ」
美雪に言われた通り、海彩は渋々前を向いた。それと入れ替わりに、少し離れた席にいる瑞葉が美雪の方を向いていた。
瑞葉も何か言おうとしていたが、美雪はそれを唇に人差し指を当てるジェスチャーで制す。
口を開きかけていた瑞葉は、口の端を人差し指と親指で摘むとそのまま横にスライドさせながら口を閉じていき、ファスナーを閉める素振りを美雪に見せる。
美雪が手で丸を作ったのを確認して、瑞葉は満足そうに前に向き直した。
「あー、相葉瑞葉はこの後職員室……じゃなくて生徒指導室に来るように」
「えっ! なんでっ!?」